観音 智志 AD 調査を用いた高齢者の交通行動実態把握と公共交通サービスレベルが交通行動に与える影響 佐野 可寸志 近年、日本国内では高齢化が進み、今後交通弱者が増加する可能性がある。それらの研究背景を踏まえ、本研究ではアクティビティーダイアリー調査を用いて長岡市内の公共交通サービスレベルが高齢者のトリップ数にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするとともに、地域の公共交通が維持されることで、その公共交通利用者の将来の移動に対する安心度にも影響を及ぼしているのかどうかを明らかにする。また、公共交通を利用せず、家族や知人などの身内の送迎サービスを利用している人の送迎依頼時の心境に着目してトリップ数の要因を明らかにし、身内の送迎と比較して、送迎依頼時の気兼ねを軽減すると考えられるライドシェアサービスを導入した際のトリップ数の増減を検討する。 まず公共交通利用者のトリップ数においては、モデルの推定結果から、公共交通サービスレベルである「バス停までの距離」「運賃」「運行間隔」のうち、トリップ数への影響が一番大きいものは「運行間隔」であることがわかり、最寄り路線の運行間隔が30分以内に収まっている場合、トリップ数の増加に大きく寄与することが示された。 また、身内の送迎サービスを利用している非送迎者においては、送迎者ドライバーの時間を制約してしまうことに対する気兼ねが大きいほどトリップ数が少なくなることが示され、その他にも「年齢」と「移動距離」の変数が有意となり、加齢によって、また目的地までの距離が大きいほどトリップ数が減少する知見が得られた。なお、身内の送迎をライドシェアサービスに置き換えた際のトリップ数は心境のみに着目した場合トリップ数は約8.7%増加することがわかった。 さらに、将来の移動に対する安心度の分析では、推定されたモデルから、「バス停までの距離」「運賃」「運行間隔」の3変数のうち、「バス停までの距離」の影響が1番大きく、バス停までの徒歩所要距離が遠い人ほど、将来の移動に対して安心感を抱けていないことがわかった。また、「運賃」と「運行間隔」についてはあまり影響を及ぼさないことがモデルから示された。 以上のことから、郊外部のバス路線の周辺住民は運行間隔が短いためにそのバスの利用機会が少ないが、そのバス路線のバス停に移動能力が衰えた場合でも歩ける距離にあることで、将来の移動に対する安心感をもたらしていることが言える。