阿部圭太 MODIS積雪プロダクトを利用した衛星積雪面積率と積雪水量の関係に関する研究 高橋一義 日本海沿岸域は世界有数の豪雪地帯である.積雪は雪崩や融雪に伴う洪水や地すべり,交通災害などの要因となっている.一方,雪が多く降る地域では観光資源としての側面を持っている.用水河川へ流出した融雪水は農業用水や工業,発電のための資源として利用されている.積雪分布や積雪水量を時間的・空間的に捉えることは災害の発生予測や資源がどれだけ利用できるかを知る上で重要である.本研究ではMODIS積雪プロダクトを用いて,2002年から2020年までの信濃川流域と阿賀野川流域の積雪面積率を算出し,積雪水量との関係が推定可能か検討した. 本研究では2002年から2020年までの19年間で融雪期に該当する3月から6月末までのMODIS積雪プロダクトを利用した.対象とした領域は北緯40°東経135°から北緯34°,東経142°である. MODIS積雪プロダクトを利用して流域ごとに積雪面積率を算出した.積雪面積率の経時変化を抽出すると,前の8日間の積雪面積率より次の8日間の積雪面積率が大きくなることが多々あった.消雪日の設定に影響が出るため,積雪面積率の経時変化をシグモイド曲線で近似し, 2%未満になった日を消雪日とした.信濃川流域でDOY60における積雪面積率が一番大きい年は2012年,小さい年は2007年であった. 設定した消雪日と流域内の降水量,流出量を利用して積雪水量を算出した.信濃川流域でDOY60における積雪水量が一番多い年は2012年,少ない年は2007年であった.19年間の積雪面積率と積雪水量の推移は相関が低かった.しかし,グラフの推移が似ている年が存在した.そこで,信濃川流域の積雪面積率と積雪水量の関係をクラスター分析し,7つに分類した.いずれも高い相関が見られ,それぞれのRMSEは15mmから29mmの範囲であった. 積雪水量が特に少ない2020年,2007年,2009年,2016年,2019年における新潟県内の5つの指定観測点で観測された平均累計降雪深を比較すると,それぞれ89cm,184cm,240cm,391cm,375㎝であった.いずれも平成元年から令和2年度までの平均値である467cmよりも小さい.積雪水量が高く推移していた2005年,2006年,2015年の平均累計降雪深は607cm,695cm,601cmであり,平均の467cmよりも大きい.このことから,雪の少ない年と雪が多い年に見られる傾向は明確な差があると考える. 気象庁の公開している過去の気象データと積雪水量に関係があるか調べた.信濃川流域内のある観測点では積雪水量の多い年と少ない年で最深積雪に違いが見られた.積雪水量の少ない年である2007年,2009年,2016年,2019年,2020年では最深積雪はそれぞれ38cm,89cm,117cm,174cm,53cmであった.積雪水量の多い2005年,2006年,2015年の最深積雪はそれぞれ320cm,312cm,291cmであった.積雪水量の多い年・少ない年の最深積雪は高い年・低い年の5つと合致していた.このことから,特定の観測点での最深積雪を把握することで大まかな積雪面積率・積雪水量が推定できる可能性が示唆された.