髙田竜司 発災前後の画像情報を用いた転移学習による斜面崩壊地の抽出に関する研究 髙橋一義 災害発災時に被害状況を迅速に把握することは、被災地の救助活動を効率的に行うために重要である。発災後にアクセスが困難な地域の状況を迅速に知る手段の一つとしてドローンとそれに搭載されたカメラ画像の利用が挙げられる. また被害個所の検出に関しては, 深層学習の活用が報告されている. 本研究では発災後にアクセスが困難な地域の状況を迅速に知る手段の一つとして利用されている深層学習を用いて, 目視での被害調査が困難な場所での斜面崩壊地の迅速な把握を試みた. 2004年10月23日に発生した新潟県中越地震を対象とした. 2003年9月5日にQuickBirdによって撮影されたオルソ補正済みのパンシャープン画像を発災前の画像とし, 2004年10月24日に撮影された345シーンの空中写真スキャン画像をSfMソフトでオルソ補正した画像を発災後の画像とした. また, 教師データのラベル付けは国土地理院作成の被害状況図を参考に目視判読を行った. はじめに、予備実験として独自に構成した深層学習モデルとSqueezeNetを利用した転移学習済みのモデルで斜面崩壊地の判別結果を比較した. その結果, 崩壊地の再現率と正解率は転移学習を行ったモデルの方が高くなり, 非崩壊地の再現率は独自に構築した深層学習モデルの方が高くなった. 次に, 複数の事前学習済みモデルを利用した転移学習を行い, 斜面崩壊地の判別結果比較を行った. その結果, 崩壊地の再現率と正解率が最も高かったのはGoogLeNetであり, 非崩壊地の再現率が最も高くなったのはVGG-16であった. 最後にGoogLeNetを用いて, これまで行っていたパッチ単位での検知ではなく広い領域を持つ画像からの斜面崩壊地の検知を試みた. その結果, パッチ単位での検知よりも崩壊地の再現率は低くなったが非崩壊地の再現率は高くなった. 本研究全体を通して誤判別された崩壊地は主に影領域に存在する崩壊地が多いことが分かった. 本研究では可視画像情報のみを用いたことで影領域に存在する崩壊地がうまく検知できなかったため, 高さなどほかの情報を教師データとして利用することで崩壊地をより検知できると考えられる.