岡崎 恵子 直前周知メディアによる水害時避難への有効性の評価 松田 曜子 相次ぐ水害が頻発する状況をふまえ,そのソフト対策として,住民自身がマイ・タイムライン(個人の防災行動計画)を作成する方策が実際にも行われているが,本研究ではそれらに加えて,災害発生の約1週間前から前日に避難路などを周知する直前周知メディアの有効性について検討・評価する.直前周知メディアが必要である理由として,近年の水害では高齢者の逃げ遅れが課題となっていることなどから,そのような人々に確実に避難情報を伝達するためには,紙媒体でわかりやすい情報提供かつ切迫感を伝達することが重要であると考えた. 本研究では,ユーザーからの満足度の高い直前周知メディアを作成するため,人間中心設計のHCDサイクルの手順に従って研究を行った.HCDサイクルは,①利用状況の把握,②ユーザー要求の明確化,③ユーザー要求を満足させる設計による解決策の作成,④要求事項に対する設計の評価の4プロセスから構成されており,最終的に,作成したプロトタイプがユーザーの要求を満たしているかユーザビリティ評価を行う手法である.本研究では,ユーザビリティテストを用いてユーザビリティ評価を行った. まず初めに,ユーザーの利用状況の把握をするため,対象地域における避難行動と直前周知メディアの提案に対する評価を主な目的としたアンケート調査を実施した.具体的には,令和元年東日本台風において新潟県長岡市で実際に避難がなされた2地域を対象として,アンケート調査から住民の避難行動や直前周知メディアによる提案に対する評価を集計・分析した.その結果,直前周知メディアの提案には年齢が高いほど肯定的な意見が多いことを明らかとした.続いて,ユーザー要求の明確化をするため,直前周知メディアにおける希望記載項目をアンケート結果をもとに,調査した.次に,ユーザー要求を満足させる設計による解決策の作成をするため,直前周知メディアにおける希望記載項目の結果から直前周知メディア案を3パターン作成した.最後に,作成した直前周知メディア案に対して,それぞれの比較を行うために日頃から地域へ水害時避難の啓発の機会が多い中越市民防災安全士会と一般市民の代表として長岡技術科学大学の学生を対象としたユーザビリティ評価を行った.この結果,中越市民防災安全士会と学生ではユーザビリティテストにおいて,評価因子のばらつきや配布方法の意見では対照的な意見であったことがわかった.ユーザビリティテストや比較評価,各直前周知メディア案に対する意見から,改善案を作成した.