太田 佳希 災害リスクを考慮した道の駅の広域防災拠点機能に関する研究 松田曜子 近年わが国では,東日本大震災や熊本地震,九州北部豪雨などの甚大な被害をもたらした災害が頻発している.それだけでなく,南海トラフ地震や首都直下地震などの発生が予測されており,今後の災害への備えが急務となっている.このような状況の中,道の駅は幹線道路沿いに立地する公共施設であることから,平成16年10月の新潟県中越地震等では避難所や災害復旧拠点等として活用され,近年,災害時の活用についても注目されている. 道の駅を防災の観点から着目すると,立地面では,インターチェンジや緊急輸送道路など交通の結節点に立地しているアクセス性の良さがうかがえる.また,施設・設備面では,自衛隊の集結場所や物資集積など様々な用途に用いられる駐車場の面積が潤沢なだけでなく,防災に関する設備が充実している駅もある.以上を踏まえると,道の駅が広域的な防災拠点として活躍する可能性は高いと考えられる. そこで,本研究では,関東1都6県の既存の道の駅が有する立地・設備項目を考慮し,広域防災拠点を構成する拠点群のうち,「進出拠点」,「救助活動拠点」,「広域物資輸送拠点」のいずれかの役割を担えるかを評価する.災害リスクについては「浸水」,「土砂災害」,「液状化」,「津波」を考慮する. はじめに,「進出拠点」,「救助活動拠点」,「広域物資輸送拠点」それぞれに必要な条件および立地・設備項目を都道府県の広域受援計画や内閣府の資料等により明らかにした. 次に,3種類の拠点に必要な立地・設備項目に必要となる基準調査を行った.立地・設備項目は質的項目と量的項目に分けられ,量的項目の基準に関してはヒアリング調査や既存の広域防災拠点から収集したデータを基に作成した. 次に,作成した基準を用いて,関東1都6県の道の駅が3種類の拠点の役割を担えるかどうか評価した.Ⅰ「道の駅単体での評価」,Ⅱ「既存の広域防災拠点との性能比較評価」,Ⅲ「不足している設備を補完するための整備費用評価」の3項目で評価を行った. その結果,進出拠点・広域物資輸送拠点については,設備を補完することで活用可能となる道の駅がある,という結果が得られた.救助活動拠点については,屋外スペース面積に求められる基準が高く,現状の道の駅では役割を担うことが難しい,という結果が得られた.そのため,3種類の拠点として道の駅を活用するための課題として,設備の補完,そして屋外スペース面積の拡大が挙げられた.