市沢元規 UAV-LiDAR計測による水稲生育指標推定の高精度化に関する研究 高橋一義 コメの品質を維持するための水稲の生育調査は現在人の手による慣行計測が実施されている。慣行計測は作業者が圃場に入り、水稲の草丈、茎数、葉色について数株計測を行う。しかし、調査結果においては調査株の個体差や作業者の測定方法に影響されやすい。調査株を増やすことで圃場を面的に計測することが望まれるが、作業者への負担と作業時間の増加に繋がることから極めて困難である。PhanらはLiDARを用いた水稲の生育指標である草丈・茎数推定手法を提案した。山根はPhanらの草丈推定手法を圃場のより広域に適用させるため、UAVに車載LiDARを搭載し、高度10mにおいても水稲生育指標推定手法が適用できることを示した。 生育指標推定手法ではLiDAR計測した群落層厚さを用いており、群落下層の基準は高さデータのパーセンタイル解析によって決定している。Phanらの生育指標推定手法ではこのパーセンタイル値を生育期間で一定にして推定を行っていたが、水稲の生長による茎葉の繁茂でLiDARのレーザ光が遮られると考えられる。そこで本研究では、山根が取得した2019年のデータを用いて生育時期ごとの点群の分布を考慮した高精度な推定について検討を行った。検討内容として、生育時期ごとの適切な群落層厚さを茎数推定結果から探索した。各計測日のデータで群落下層を表すパーセンタイル値を複数設定し、全ての組み合わせで推定を行う。この推定結果からグリッドサーチで推定誤差の小さいパーセンタイル値の組み合わせを探索した。また、高さ分布を地面と水稲の混合分布と仮定し、混合分布によるクラスタリングで点群が分割可能か検証した。 茎数推定結果による検討より、生育初期はパーセンタイル値が低く、生長に伴って増加する傾向が得られた。パーセンタイル値が低いことは群落下層の基準が地面から離れていることを示している。そのため、生育初期は地面より上に分布する水稲の点群が選択されたと考えられる。このことから、群落層厚さを詳細に決めることで推定結果が高精度化されることが分かった。これに対して生育後期のパーセンタイル値は一定であり、これは群落下層の点群が含まれないためだと考えられる。このことから、群落層厚さの設定による推定精度への影響は小さいことが分かった。混合分布モデルのクラスタリングでも同様の傾向が見られ、生育初期における点群分割の可能性が確認できた。今後はクラスタリングについて詳しく検討することで分割精度の向上が期待される。