古橋知季 上空で測定されたレーダー降水量と3次元風速場を用いた地上到達固体降水量の推定と検証 熊倉俊郎 近年では,上空で観測されたレーダー降水量を地表面に垂直投影したものを地上の降水量として報道に用いるのが一般的である.しかしながら雪片などに代表される固体降水は,その形状や質量から上空の風の影響を強く受けて遠方へ流されるため,この方法では実際のレーダー降水量と地上の降水量には時間的,距離的なずれが生じているものと考えられる.本研究では数値予報モデルの東西および南北風速データを用いて,地上観測点からの水平風速,高度,時間データをそれぞれ線形補間した後方流跡線解析を実施し,この後方流跡線と技大の環境棟屋上に設置されたマルチパラメータレーダーのレーダービームが交差した座標のレーダー降水量を,上空の風の移流を受けながら地上に到達した推定固体降水量として解析を行った.さらにこの手法を用いて2020年2月5日~14日において地上気温が2℃以下かつ降雪深が1㎝/h以上である期間を雪片が観測された事例と仮定し,新潟県内のアメダス6地点(長岡,柏崎,守門,小出,十日町,津川)における後方流跡線解析から,推定降水量およびアメダス直上のレーダー降水量とアメダス降水量をそれぞれ比較した.結果として,特に山雪型の気圧配置によって県内全域で風の強くなった2020年2月5日~6日の事例では,ある一定の降水を持った雲域が解析範囲内にまばらに点在しており,後方流跡線がアメダス直上で実際に観測された雲域とは,また別の雲域の降水量を参照している場合があることがわかった.