小川 和紀 裸地における蒸発効率と地下水面位置の関係について 陸 旻皎 蒸発効率は主に表層数cmの平均的な体積含水率で表現される.地表面の体積含水率を地下水面位置と土壌特性パラメータのみで表現できる地表面有効飽和度で蒸発効率を評価することができると考えられる.しかしながら地表面有効飽和度と蒸発効率の関係は実験的裏付けが十分でない.本研究では、地下水面位置を任意の位置で設定可能な装置を作成し,恒温室を用いた恒温条件下で地下水面を任意の位置に固定することで任意の地下水面での蒸発量を計測した.この実験結果を自由水面からの蒸発量で除することで蒸発効率とした.これにより地下水面の変化による蒸発抑制を実験的に検討及び考察することができる.また,粒径の異なる粗砂,細砂,シルトの三種類の試料を用いることで粒径の違いによる影響を検討する.実験から得られた蒸発効率と既存の蒸発効率式及び地表面有効飽和度を蒸発効率式として扱った計算結果を比較することで地表面有効飽和度を蒸発効率として使用することへの適合性を検討した.結果として,風速の違いよって三種類の試料で特徴的な挙動が見られた.無風条件の粗砂を対象とした場合,本研究で評価した蒸発効率モデルの中では地表面有効飽和度Se0 ,Barton(1974)の蒸発効率モデル以外は急激な蒸発効率βの減少を表現出来ていないことが確認された.また,地表面有効飽和度Se0以外のモデルでは蒸発の第三段階を実験値よりも高含水率で推移すると表現するといった特徴的な挙動が確認された.無風条件下で粗砂の蒸発効率βを表現するならば,本研究で評価した蒸発効率モデルの中では地表面有効飽和度Se0が最も優れていることが明らかになった.細砂及びシルトを対象とした場合,無風条件下では蒸発効率βと非常に近い挙動を示した.このことから1000mm程度の地下水面かつ無風条件下においては蒸発効率βを表現できる可能性が高いことを示した.風速3.0m/s条件下では地表面有効飽和度Se0は0.8~0.9付近と表現している領域でも蒸発効率βが細砂では0.4~0.6の間を推移しており,シルトでは0.2~0.3付近で推移していることが明らかになり,表層に乾燥帯が形成されている可能性が示唆された.このことから地表面有効飽和度Se0は外部条件が非常に穏やかな条件でのみ粒径によらず蒸発効率βとして十分に表現できる可能性が高いことが明らかになった.また,地下水面位置と土壌特性パラメータのみで蒸発効率を表現することは難しく,外部条件による補正を加える必要があることが明らかになった.