皆川敦也 地震ハザード評価のための表層地盤の増幅特性に関する研究 池田隆明 日本では地震防災対策に関する取り組みが行われている一方で,海外では地盤調査データ等が十分でなく,地震リスクが適切に評価されていない場合が多い.本研究はヤンゴン市における地震リスク対策に焦点を当てる.地震被害は地表面の揺れが影響するため,地域的分布を評価する表層地盤増幅特性に着目する.既往研究においてヤンゴン市の地盤の増幅特性は地形区分やボーリング,微動等を用いて最大速度増幅率(ARV)の評価が行われているが,構造物の振動解析等,加速度を指標とし評価を行うことは重要であるため,我々は最大加速度増幅率(ARA)の算出を試みた. 増幅率の算出は基盤最大振幅と地表最大振幅の比を用いて行うため,基盤と地表に強震計の設置がされている鉛直アレー観測が必要となる.しかしながら,ヤンゴン市において観測網設備が整っていないため,日本における類似地点の選定した.観測記録は加速度時刻歴波形であるため,積分により速度時刻歴波形を算出する.観測波形には,あらゆる振動数を含む合成波であるため,建物への影響を考慮した振動数範囲の限定を行うために,フィルター補正を行った.xy軸それぞれに,ARV,ARAをプロットし,最小二乗法により一次線形の関係式の算出を行った. フィルターの補正幅によって,結果に相違がみられた.高振動数を考慮した結果としては,傾きが大きくなる傾向にあり,振幅の大小によって増幅率に変化が少ないことから,非線形性の影響を受けにくい振動数の評価であることが分かった.よって,本研究において0.5-10Hzの補正幅を提案する.また,ヤンゴン市の地盤との類似を考慮し,検討地点の表層厚の分類を行った.ヤンゴン市の適応式として,表層厚15m以上のフィルター5.0-10Hzによる算出結果を用いることとした.ARAはARVの約1.1倍となる傾向にあり,速度よりも加速度の増幅率の方が過大評価となることが分かった.また,表層厚が浅いほど,この傾向が大きくなる結果も得られた. 本検討は日本の地点を用いて評価を行った.ヤンゴン市等の地震防災対策を行うための情報の蓄積が十分でない地域を対象とする場合,本研究の検討手法は面的な評価を行う上では非常に有効であると考えられるが,信頼性や精度を考慮する上では.現地調査による情報が必要不可欠である.今後地震防災対策のための情報の蓄積が重要となるため,地盤調査や地震観測の普及が必要となるだろう.