CHIMEDTSEREN OTGONBILEG 日本海沿岸部の自然環境作用と飛来塩分量の定量評価 下村 匠 沿岸部のコンクリート構造物は、海域から発生した飛来塩分により、塩害を受けており、飛来塩分量の高精度の予測が必要とされている. コンクリート標準示方書にある、海岸からの距離によって構造物に作用する飛来塩分量を設定する方法が幅広く利用されている.しかし、飛来塩分は、海岸からの距離だけでなく、周辺の気象・波浪・地形条件に大きく影響を受ける現象である. そこで、本研究では構造物に作用する飛来塩分量を周辺の気象・波浪・地形条件を考慮して予測できるようにすることを目的として、現地観測結果に基づいて気象・波浪・地形条件と飛来塩分量の関係について定量化を行った. 本研究でモルタル供試体を秋田県から石川県まで合計214箇所設置し、2019年12月~2020年3か月間暴露したデータを用いた.この結果より、能登半島に囲まれた富山県は塩分量が小さく、佐渡島や石川県の北西は塩分量が高い傾向がみられた.これは、冬季の北西からの風の影響があったと考えられる.また、同じ県内でも、塩分量が大きく異なる観測点があり、これは消波施設の有無や地形条件が影響していると考えられる. したがって、飛来塩分量の定量化には地形・気象・波浪条件を考慮する必要がある. まず、波浪条件を波浪推算モデルSWANを用いて数値解析で予測した.この結果より、秋田県、山形県や新潟県では波高が同程度である一方、佐渡島や能登半島などでは日本海側と東側で波高が大きく異なっていることが分かった.全体的には、波高と表面塩分量の傾向はおおむね一致しており、波高が表面塩分量に影響を及ぼすことが確認されたが、新潟県など県によって一致しない場合もあった. 次に、地形条件の影響を整理するために、Google Earthを用いて空中写真を収集し、観測点の地形条件を砂浜海岸、消波施設(沖海域)、消波施設(堤防前面)という3つの分類に分けた.また、風が吹いている方向の観測点から消波施設までの距離、または汀線までの距離を平均して離岸距離とした.離岸距離と表面塩分量の関係より、砂浜海岸の塩分量は消波施設がある地点の塩分量より少ないことが分かった.また、堤防前面に消波施設がある地点では、塩分量が最も大きくなる傾向であり、離岸距離に依存していないことが分かった. 最後に、消波施設の有無と波高が1m以上と1m以下で分類した結果、消波施設あると塩分量が多く、波高が高いと塩分量が多いことが分かった.この関係を指数関数で近似すると、波高1m以上と以下で5倍程の差があり、消波施設の有無により2倍程の差が発生していることが確認された.