高木耕 構造物表面における降雨粒子の到達と流動過程に関する数値解析 下村匠 コンクリート構造部の塩害劣化予測の精度を上げるためには,境界条件となる構造物表面の塩化物イオン量を適切に把握する必要がある.構造物の各部位における飛来塩分による塩分量を把握するためには,外部環境下で水分供給源となる降雨についても把握する必要がある.その理由として,降雨の影響として洗い流しによって表面塩分量が小さくなること,塩分の再分配がおこることが挙げられる.しかし,降雨が当たる箇所が構造物の部分ごとに異なること,コンクリート表面では水の流動で局所化が生じることが挙げられており,降雨による塩害に対する影響を適切に評価できていないことが現状である. 本研究では,コンクリート構造物における降雨粒子が付着するまでの到達過程および到達してからの流動過程の数値解析モデルの構築を目的とし研究を行った.さらに,その数値解析が妥当性を確認するため実寸大の模型を用いた実験を行った.また,実験値と比較し,解析結果の検証を行った. まず,実寸大のコンクリート構造物の模型を用いて,降雨を模擬した実験を行った.加えて,形状の違う模型ならびに風況を変化させた降雨実験を実施した.その結果,コンクリート表面に到達する降雨の水分量と範囲は,周辺の風況および模型形状によって大きく変化していることが分かった.また,無風条件では,降雨側面に直接到達する降雨量が少なく,上縁部にたまった水が側面に流れることで降雨作用が起こることが分かった.また,無風条件の実験結果は,実際の自然環境下での降雨の実験による降雨の作用状況とほぼ同じ傾向が見られた. 次に,降雨粒子到達過程の数値解析を行った.さらに,実験で求めた風速および降雨到達量を風況の数値解析結果ならびに降雨粒子到達の数値解析結果と比較し,妥当性について検証した.その結果,解析結果も風況によって,構造物の各部位ごとの降雨粒子の到達量が大きく異なることが分かった.また,今回構築した降雨粒子の到達過程における数値解析では,実験結果と比較し妥当性がある風況の数値解析を組み合わせることで,降雨粒子の付着量を定量的に評価できることが分かった. 最後に,コンクリート表面における降雨による流動モデルの構築を行った.コンクリート表面における水の流動は,風によって側面に雨が作用しているとき,各部位によって,流速が大きく異なることが解析結果から分かった.