GANZORIG TUVSHINZAYA 添接板近傍に腐食損傷を有する鋼桁のCFRP補修 宮下 剛 鋼構造物の腐食損傷に対して,軽量・高強度・高弾性・高耐食といった特徴を有する炭素繊維(CFRP)接着工法が注目されている.しかし,鋼桁添接板近傍の腐食損傷に対してCFRP補修が行われた事例は少ない.そこで,これに向けた基礎データを取得することを目的として,鋼構造研究室ではH29年から研究を進めている.H29年度の研究を通じて,CFRP補修の設計・施工マニュアルを変更に結び付く知見が得られ,さらに,R1 年度の研究では,この変更点を実構造物に展開するべく,実橋部材を模した鋼桁の4点曲げ載荷試験を行った. R1年度の実験によると,CFRP補修することで腐食された鋼桁を健全な状態まで回復でき,CFRP補修の効果が十分に確認されていることがわかった.そこで,CFRP補修工法の確立に向けては,例えば,腐食損傷量と残存耐荷力の関係を把握する等が必要であり,本研究では,R1 年度の研究をベースに,添接板近傍の腐食損傷を有する鋼桁のCFRP補修についての検討を行った. 具体的に,本研究で,添接板近傍の腐食損傷を模擬するザグリ部の幅及び深さをパラメータとして,DIANA解析ソフトを用いてパラメトリック解析を実施した.解析モデルは支間長6200mm,ピン支持及びローラー支持から構成する鋼桁であった.さらに,鋼桁のザグリ部の幅を20,40,60mm及び深さを健全な19mmより3mmずつ減少させて,合計19個のケースを対象とした.ただし,解析では,初期不整の影響を考慮していなくて,さらに,添接版のボルト等をモデル化していなかった. パラメトリック解析を行った結果,次のようにことが確認された.まず,載荷荷重と支間中央変直変位の関係,板厚減少量と残存耐荷力の関係,ミーゼス応力コンター図等の結果より,板厚減少量が約 50 %である S_53%の解析ケース以降,ザグリ部では局部座屈による変形が卓越し,これに伴い,曲げ耐荷力の低下が大きくなっているがわかった.一方,板厚減少量が60%以降のS_84%及びS_68%の場合は,健全なケースと比較して,初期剛性の剛性変化,最大荷重について大きな相違はないことが検討された.そこで,板厚減少量が母材の約 50 %となる時,最大荷重は健全の約94%低減されていることがわかった.これによって,鋼桁の降伏荷重が94%に低減された場合,補修が必要となると考えられた.そして,パラメトリック解析の精度を向上するには,初期不整及びボルトなどの影響を考慮する必要があることが考えられた.