櫻井 滉平 腐食欠陥の生じた組立圧縮材の座屈耐力に関する研究 岩崎 英治 現在,既設のインフラの高齢化が問題となっている.高度経済成長期に短期間に多くの構造物が建設されてきた.現在,高度経済成長期から約50年の時が過ぎ,この時期に建設されたものが,次々に寿命を迎えている.これは,鋼橋も例外ではなく,補修や架替対象となる橋梁が増加している.鋼橋の架替の理由の約60%が鋼材の腐食である.組立圧縮材では,損傷のうちラチス材の腐食欠陥が多くみられる.現在,ラチス材腐食欠陥による部材全体としての危険性は明確化されていない.そこで,本研究では,組立圧縮材のラチス材腐食欠陥による部材全体の座屈耐力について研究を進めていく. 本研究では,長生橋で使用されている組立圧縮斜材の形式を対象とする.まず,長生橋の組立圧縮斜材をモデル化し,線形座屈解析で座屈耐力を算出する.これにより健全な状態の各部材の座屈耐力を求める.次に,腐食欠陥による影響を調べるため,腐食欠陥時のモデルを作成し線形座屈解析を行う.この結果を踏まえて,腐食欠陥の影響がある部材を対象として,非線形弾塑性有限変位を行い,座屈耐力の減少程度を比較する.解析を行う上でラチス材腐食欠損のパターンを6つ想定した.Case1からCase4では梁中央のラチス材を腐食欠損したモデルを作成し,腐食欠損したラチス材の数や腐食面の数について検討した.Case5とCase6では,梁端部の腐食欠損を想定し,損傷位置による違いについて検討を行った. 本論文から得られた知見を以下に示す.線形座屈解析によって以下の結果を得た.腐食欠損した部材の本数が同じ損傷パターンでは,腐食欠陥した面が多いほうが,座屈耐力が低下する傾向がある. 線形座屈解析の結果を受け,ラチス材腐食欠損による座屈耐力への影響が大きいD2部材について弾塑性有限変位を実施した.その結果以下に示す.線形座屈解析では,腐食欠損面が多いほうが座屈耐力は低下したが,弾塑性有限変位解析では逆に腐食欠損面が少ない方が座屈耐力は低下した.また,腐食欠損位置を梁中央と梁端部で想定してそれぞれ弾塑性有限変位解析を実施した.結果を比較すると梁中央の方が座屈耐力の低下が大きかった.