森山哲成 三次元熱・水連成解析によるトンネル防護凍土壁の造成予測 杉本光隆 土が凍ると,土中水の未凍土側から凍結線への移動が起こり,土粒子間隙に含まれる水の多くが凍結し間隙氷となる.間隙氷の増加は,土粒子間の骨格構造を補強するため凍土を堅固にし,通水流路を狭めるため凍土に遮水性を付与する.また,氷の潜熱及び熱容量の効果は大きく,氷を多く含む凍土は多量の熱エネルギーの供給なしには融解しない.これらの特徴から,人工的に土を凍らせて軟弱地盤を強固なものにする地盤凍結工法が盛んになっている.土木工事に利用されたのは1862年に英国の鉱山用立坑建設で滞水層の崩落防止に,冷却したブラインをパイプに循環させて地盤を凍結させたのが最初である.日本においては,1962年に大阪府守口市で水道管圧入工事の補助工法として利用された.以来,凍結技術の進歩から人工的に寒さを作ることが容易になり,地下空間の利用が進む都市部を中心に,地下鉄工事やシールド工法の発進到達時の補助工などに利用されてきた.近年では,福島第一原子力発電所の汚染水対策として,人工凍土による遮水壁が採用されるなど,人工凍土の活用が注目を集めている. 一方で,土中における凍土成長や,それに伴う地下水流の変化を直接目にすることは難しいため,凍土の遮水効果を具体的にイメージすることは容易ではない.また,凍土壁を造成する際には,熱伝導,水浸透,相変化といった様々な物理現象が互いに影響を及ぼし合って,そのメカニズムは複雑であることから,これらの連成解析を考慮したモデルは確立されていない. 本研究では,地盤凍結工法における凍土造成予測を正確に行うモデルの確立を目的として,多孔質媒体における熱伝導と水浸透理論に基づいて凍土造成予測を正確に行う数値モデルの妥当性を検証する.検討対象は相鉄・東急直通線羽沢トンネルのシールドマシンテール部換装防護凍結工とする.本研究における凍土造成予測モデルと検討対象において測定された温度データの比較を行うことでモデルの有用性を確認する.まず,二次元的にモデルの妥当性を確認した後,三次元的に凍土造成予測を行うことで,凍土壁造成過程の明確化を図ることとした.本研究は,均質性,優れた強度を必要とする地盤において,薬液注入工法に替わり地盤凍結工法を採用した際の,凍土壁の構築,維持管理,および当該技術の妥当性の検証に寄与する.