勝山 大地 水難事故が多発する幕張の浜付近の海象の特徴の把握 犬飼 直之  幕張の浜という海岸は遊泳禁止区域に指定されている.しかし,2005年から2020年までに5件の水難事故が発生している.また,2018年からは3年連続で死亡事故が発生した. これらはどれも突堤横で事故が起きている.それぞれ入射波向や波高が異なる条件であるため,事故発生時の海象もそれぞれ異なることが予想できる.本研究では幕張の浜での事故発生時の海象の把握,計算モデルを用いたシミュレーションをすることで,事故発生時の水面挙動や現場の流状の傾向の把握を行うことを目的とする.  事故発生時の現場の様子を再現すべく,独立行政法人港湾技術研究所が提供しているNOWT-PARI46d7aを用いた非線形波浪変形モデルで数値計算を行う. 入射波高や周期などは事故発生時の海象データを使用し,地形データには現地調査で得た測量データを使用する.まず,2020年の事故発生時の波浪状況の再現を行う.計算条件は波向WSW,有義波高0.4m,有義波周期2.5sと設定した.解析の結果,入射波が突堤に遮られて事故現場は突堤の陰影部となり,突堤先端は0.4m程であった水位差が事故現場では0.1m程度に減衰した.一般的には海水に浮上しているときには鼻上の高さに水面が位置する.計算結果より,事故発生時にはこの高さを基準として2.5秒ごとに目と口の高さを水面が上下していたこととなる.2020年の事故の溺水原因として,該者は遊泳が得意でなかった,数秒ごとの水位変化で呼吸困難であった事などが考えられる.このように,波高や水位差が比較的小さい場合でも事故が発生する可能性があることが判明した. 次に,2019年の事故は風向SSW,波高0.4m,周期2.5sであり,この条件で計算を行った.波高0.4mの入射波は,突堤横で水位が増大して事故発生現場付近から最深部付近で0.9m程に増大した.この水位差が増大している場所では水底が攪拌されることで,底質の粒形や水深が大きくなっているのではないかと考察できる.また,2018年の事故は風向SWであり,このように突堤と並行方向に入射する場合,突堤横の場所の波長や振幅は入射波とほぼ同じであることが確認できた.  波浪の入射条件を様々に変化させ計算を行った結果,現場では波浪状況で水面形が大きく変化することがわかった.特に,突堤へ直接入射する波向では,事故現場発生付近では波高が増大,波長が半減し,複雑な水面形となり危険であるため,事故の注意が必要である.また,事故現場が突堤の陰影域になる場合でも,実際に事故が発生していることから,注意が必要であるといえる.