難波 悠太 離岸流場において安全に活動するための指標の提案 犬飼 直之 本研究グループでは過去に山下らが離岸流流速の推算式を作成し,離岸流流速の推算を行った.推算式では,0.2 m/s程の弱い離岸流はほとんど評価が行われていなかったが,銭函海岸の事故事例から弱い離岸流でも事故が発生していることが確認された.また,事故地点の水深は足が届く程度の水深であることから,離岸流による水難事故を考える際は,弱い離岸流に加え,事故発生メカニズム等から原因を追究することで水難事故防止に寄与する知見を得ることができると考え,現地調査及び数値計算を行った.また,蓄積された離岸流の観測データから離岸流流速推算式に用いるパラメーターを算定し直し,より精度の高い推算式を作成することを試みた. 実際に水難事故が発生した海岸で行った離岸流の現地調査では,海面着色剤を使い,UAVから離岸流の挙動を空撮することができた.また,離岸流に漂流される実験では,汀線からの離岸距離ごとの景色を比較した.その結果,100m沖から40m弱陸に近づいただけでは景色の変化はあまり感じられず,距離感の喪失が起こり,体力を消耗することで溺水につながることがあると考えられた. NOWT-PARIを用いた波浪変形計算の結果からは,離岸堤開口部と離岸堤背後で水面挙動の相違が見られ,回折波が重なったときに周期の短い不規則な波形を形成する事も確認できた.また,事故はギリギリ足が届かない程度の水深で発生していたことも確認され,実際にそのような体勢での遊泳速度を室内プールで測定した結果,0.25 m/sの移動速度であった. 蓄積された離岸流の撮影データからは,各波浪条件下での離岸流幅,離岸流流速の経験式を得ることができた.また,山下が作成した波高の変化による離岸流流速推算式のパラメーターを8海岸18ケースの離岸流観測値から算定し直したことで,従来の推算式よりも観測値に近い挙動を得ることができた. 以上より,実際に入水して移動する際の移動速度および安全に遊泳可能な波高を,有義波高と離岸流流速の観測値から作成した経験式より,定量的に把握することができた他,漂流した際の景色の変化についても離岸距離別に把握することができた.また,海底勾配が既知の海岸においては,波浪条件から離岸流流速を推算することが可能となったため,離岸流場で安全に活動する為の知見を得ることができた.