村田 晴希 土の破壊に関する粒子型の数値解析手法の検討 福元 豊 地盤材料の,風化による劣化の影響として挙げられる要因は,物理的作用と化学的作用の2 点がある.物理的作用とは,接触する鉱物間の熱膨張率の違いや間隙中の水が凍結融解を繰 り返すことから生じる体積の膨張収縮である.一方で化学的作用とは,主に地上で行われる 生物活動と日照による酸化である.これら風化によって地盤中に発生した亀裂の,その後進 行する挙動やそれに伴う強度変化を理解することは,地盤風化を数値解析モデルとして作成 するにあたって有意義である. 本研究では,岩石やガラスの動的破壊プロセス解析についての基礎的検討で用いられたこ とのあるPeridynamicsを土粒子で構成される地盤に適用する. PeridynamicsとはSillingにより提唱された理論で, 有限の距離で相互作用する粒子の運 動を解くことで連続体場を表現する手法である.次式で示されるように,支配方程式中に応 力・歪み・変位の空間勾配の代わりに積分方程式を用いることで材料中の亀裂の生成・進 展・連結等の煩雑な過程を容易に表現できる. 紙面の都合上,記号の詳細は割愛する. 本PD解析では仮想計算区域において,所定の計算点を格子状に均等に配置し,縦方向に圧 縮力を加える.縦横0.2mの空間内に,縦0.1m横0.05mの供試体を想定して仮想粒子を 400×200の80000粒子,格子状に敷き詰める.供試体中央部には初期亀裂として幅0.002m高 さ0.008mの亀裂を設ける.それにより,亀裂分の126粒子が80000粒子から引かれる.均等に 格子状に配置された仮想粒子群を,上部は固定したまま下部を0.001m/sの速度で圧縮する. これによって生じる初期亀裂両端に生じる亀裂進行の追跡及び圧縮応力を解析し,既往研究 にて得られた試験結果と比較することで,PDによる試験再現の妥当性及びHorizonδ の違いによる亀裂進行の違いなどを調査する. 本研究を通して,PDの仕様であるHorizonδの範囲の取り方について,土系供試体の圧縮 試験再現についてはHorizonδを4以上に設定する必要があることが分かった.また,破壊指 数G0の違いによって破壊形態には大きな変化が見られなかったが,一軸圧縮応力のピーク に変化が見られた.一方,ヤング率の減少による違いではピーク応力が減少し,ピーク応力ま での上昇角度も小さくなった. 今後の課題としては,今回の解析ではやや小さな値が解析された応力,ひずみを実際の一軸 圧縮試験の値に近づけるべく破壊指数及びヤング率を調整することや,含水比と相関のある パラメータを発見することなどが挙げられる.