衣川元貴 長期地盤沈下を生じる軟弱地盤の圧密特性と盛土の残留沈下に関する数値シミュレーション 大塚 悟 日本海沿岸東北自動車道は,新潟市から青森市に至る総延長約340(km)の高速道路である.新潟県内では,軟弱地盤上に無対策で盛土を構築したため,供用後,長期沈下の影響から交通に支障を及ぼし,継続的な維持・補修を余儀なくされている.しかし沈下進行は止まらず今なお続いている.そのため,本研究では数値解析(弾塑性圧密変形解析)により検討区間(日本海沿岸東北自動車道の聖籠新発田IC~中条IC間)の盛土の長期沈下のメカニズムを明らかにすること,併せて,現地地盤の圧密特性を定ひずみ速度圧密試験による繰り返し荷重を載荷することで明らかにすることを目的とする. まず,オーバーレイや施工方法が盛土長期沈下にどう影響するか確認するため,弾塑性構成式SYSカムクレイモデルを用いて,盛土沈下のシミュレーションを実施した.供用後から現在までの対象盛土の実測沈下量は3.91(m),解析による沈下量は3.92(m)となり,実測値と同様の結果が得られた.また,現在からおおよそ30年後の盛土の沈下量を解析により予測すると,4.02(m)となったが,盛土沈下量は時間の対数に比例せず4.02(m)に収束する挙動を示した.このようになった要因の一つとして,SYSカムクレイモデルが二次圧密を考慮していないことが挙げられる.そのため,解析により求めた盛土沈下量よりも大きな沈下を生じる可能性がある. 近年,地下水位変動による軟弱地盤の長期沈下が確認されている.北陸地域では地下水を揚水して消雪に利用する雪国特有の事情があり,地下水位変動は極めて大きく継続的な地盤沈下を引き起こしていることから,地下水位の変動に伴い生じる繰り返し荷重に対する土の圧密特性を把握するために,定ひずみ速度圧密試験機を用いた繰り返し圧密試験を実施した.試験結果から明らかになったことを以下に示す.  繰り返し荷重に伴う間隙比の減少が確認できた.  繰り返し荷重に伴う土の間隙比減少は単なる過圧密化である.そのため,その土が持つ正規圧密曲線に変わりはない.  発生するひずみ量は繰り返しを行う過圧密比の大きさに比例する.  過圧密比が大きい範囲における繰り返し荷重に伴う塑性変形は微小である.  繰り返し荷重に伴う塑性変形は一定値に収束することはない.  繰り返し荷重に伴い発生するひずみ量はΔ ε = a N b で予測することができる. Δ ε :繰り返し荷重に伴い発生するひずみ量   N:繰り返し回数 a , b :Δσ‘/σ’により求まる定数  繰り返し荷重に伴い発生するひずみ量は塑性指数・自然含水比・液性限界と直線的な関係にある. 上記したことより,繰り返し荷重に対する土の圧密特性を把握することができた.今後,繰り返し荷重に対する土の圧密挙動を考慮した設計法の確立などを目標とし,より詳細なデータを集めていく必要がある.