石塚直人 ジオグリッドによるアスファルト表層へのリフレクションクラック抑制効果に関する研究 高橋修 我が国は,高度経済成長期から道路におけるアスファルト舗装の整備が増え始め,現在では総延長約100 万kmの舗装ネットワークが形成されている.これに伴い,舗装表面にひび割れやわだち掘れといった損傷が早期に生じる劣化区間が増加していることや,舗装に対する維持修繕費の削減により,メンテナンスを十分に行えない舗装が増えていることが問題となっている.諸外国では,アスファルト舗装の修繕に,表層底面にジオグリッドを敷設する工法を活用している.しかし,補修工事でのアスファルト発生材を再利用することが原則となっている我が国では,発生材にジオグリッドが混入していると再生骨材として運用することが難しいため,アスファルト層でのジオグリッドの活用事例はほとんどない.このような状況下,近年バサルト繊維が開発された.バサルト繊維は,ガラス繊維と同等以上の引張強度を有しており,基材が鉱物由来であることからアスファルト層の補強用素材として有望視されている. 本研究では,早期劣化区間におけるひび割れが生じたアスファルト層に,バサルトグリッド(以下,BG)を使用して補修した場合の,表層へのリフレクションクラック抑制効果について検討した.BGの仕様および表層と基層の付着強度に着目し,これらがリフレクションクラックの抑制効果に及ぼす影響について定量的に評価した. まず,アスファルト層に補強材を敷設した舗装の補強効果に関する基礎的知見を得るため,弾性理論に基づく構造解析を実施した.その結果,強度低下した基層上に高強度の補強材を敷設すると,表層下面の引張りひずみをより軽減できることがわかった. 次に,BGを敷設した際の基層と表層の付着強度を知るため,一面せん断試験を実施した.その結果から,BGの開口部寸法や線材の太さが不適当な場合や乳剤を散布しない場合では付着強度が弱くなることを確認した. そして,基層のき裂が広がった際の表層へのき裂進展状況や層間破壊抵抗性を知るため,き裂拡張試験を実施した.その結果,高強度なBGを敷設することで表層へのき裂進展抵抗性がより向上すること,および付着強度が弱いとせん断による層間破壊が先行するため,補強効果が低下することを確認した. また,繰返し輪荷重に対する表層へのき裂進展抵抗性を知るため,繰返し輪荷重載荷試験を実施した.その結果から,BGによるリフレクションクラックの抑制効果は表層底面のき裂発生を抑制するもので,表層にき裂が発生して進展していく過程においては,それを遅延する効果は期待できないことがわかった.