若林颯馬   ポーラスコンクリートを用いた道路排水中の重金属除去   小松俊哉   現在,公共用水域への汚濁負荷の比率として,発生源が明確な工場排水等の比率が下がっている一方,対策が困難な道路,農地等の発生源が不明確なノンポイント汚染の比率が高まっている.市街地における主なノンポイント汚染の発生源として,道路排水に含まれる重金属による汚染が挙げられる.本研究では,特に問題となる重金属を既往の研究から選定し,その重金属を用いてポーラスコンクリートによる公共用水域や土壌,地下水の汚濁削減を検討した. 重金属は,コンクリートの材料であるセメント硬化体に固定されやすい性質を持つため,コンクリートの中でも空隙を多く有し,透水に適していると考えられるポーラスコンクリートに着目した.どのような性状のポーラスコンクリートが優れた吸着能を持つか検討するために,複数の異なる配合のポーラスコンクリート試験体を作成して実験を行った. 試験体中の空隙が,重金属吸着量に影響を与えるのかを検討するため,空隙率20%,25%,30%と普通コンクリートの4種類の試験体を作成した.重金属濃度について文献調査を行ったところ,Pb(環境基準:0.01mg/l)とZn(環境基準:0.03mg/l)の二つが排水中の濃度が高濃度であり,Znは環境基準の超過が多かった.またCuについては水生生物への毒性が強いことから,測定対象とする重金属はCu,Pb,Znとした.重金属除去実験はCu:0.2mg/l,Pb:0.1mg/l,Zn:1.0 mg/lの重金属溶液1.5Lを作成し,作成した試験体 (φ50×50mm)を沈め, 7日目までの1日ごとと10日目に重金属溶液を採取し,ICP(高周波プラズマ発光分析法)を用いて重金属濃度測定を行った. 結果として,ポーラスコンクリートは,空隙率の違いによる吸着量の大きな差異は認められなかったものの普通コンクリートより優れた吸着能力を持つことが確認された.吸着率はZn>Pb>Cuの順であり,10日間におけるポーラスコンクリートでの除去率はZn 86〜88%,Pb 62〜85%,Cu 55〜59%を示し,普通コンクリートの各々75%,62%,42%を上回った.また,Cuに関しては,すべての試験体で実験初期1〜2日目に濃度が上昇する現象がみられ,セメントからのCuの溶出が考えられた. 今後は上部から一定量の重金属溶液をポーラスコンクリートに浸透させ,下部より流れ出た重金属溶液の濃度を測定する散水カラム試験の実施および,それに伴い透水係数も測定する必要があると考えられる.また,Cuの溶出が確認されたため,Cu及び他の重金属の溶出実験を行うことも重要であると考えられた.