小林 有規 脱水汚泥を用いた高濃度嫌気性消化実験 小松 俊哉 下水汚泥の嫌気性消化は一般に基質の濃縮下水汚泥の固形分(TS)濃度が3.0%程度で行われているが,TS濃度を高めて消化を行うことで,消化槽容量を小さくできることだけでなく,消化ガス発生量の増加および加温用燃料の削減を可能にし,消化槽運転の効率化につながると考えられている.しかし一方で,高濃度消化はアンモニア等の蓄積による阻害(4000mg-N/L程度)が懸念されるため,適正な運転負荷を把握することが重要である. 本研究では,高濃度バイオマス単独で嫌気性消化することに焦点を当て,水処理方法の異なる2か所の脱水汚泥,比較対象として濃縮余剰汚泥を用いて回分実験を行った.また,脱水汚泥の基質TSを5.0%,7.5%,10.0%として滞留日数(HRT)30日で連続実験を行い,脱水汚泥の消化特性を評価した. 回分実験では,水処理方法の異なるA(標準活性汚泥法),Bの脱水汚泥(オキシデーションディッチ法),C,Dの濃縮余剰汚泥を用いて最初の実験,Bの脱水汚泥,余剰汚泥,凝集剤を添加した余剰汚泥を用いて2回目の実験を行った.Aの脱水汚泥は,C,Dの濃縮余剰汚泥よりも高いガス発生量を示した.また,濃縮下水汚泥の中温消化での正味の投入VS当たりのバイオガス発生量の一般値である約500(NmL/g-VS)を上回り,Aの脱水汚泥は活性が高かった.Bの脱水汚泥はC,Dの濃縮余剰汚泥よりガス発生量が低く,Aより活性が大幅に低かった.これは,OD法を採用しているBでは低負荷で水処理が行われているため,発生する汚泥に易分解性有機物が少ないことが考えられる. 脱水汚泥が余剰汚泥より活性が低い要因を検討するために,Bの余剰汚泥を用いた実験では,脱水工程を受ける余剰汚泥は凝集剤添加により約25%の投入VS当たりのガス発生量の低下が見られたことから,凝集剤の添加も脱水汚泥の活性が低い要因である可能性が考えられる. 連続実験では,TS5.0%,7.5%での運転は,全期間(66日間)継続的なガス発生量の低下やアンモニアによる阻害も見られず,pH,ORPも至適範囲内であることから安定した運転が行われた.AのTS5.0%,7.5%の運転での投入VSあたりのガス発生量の平均は,445(NmL/g-VS),396(NmL/g-VS)であった.一方で,Bの5.0%,7.5%は,264(NmL/g-VS),233(NmL/g-VS)であり,回分実験と同様にAの方が活性は高かった.TS10.0%での運転は,A,B共に1滞留目を超えてからのガス発生量の低下やアンモニアの蓄積が見られたことから,運転を継続しても破綻する可能性が大きいと考えられた.