大滝風子 下水余剰汚泥の嫌気性消化におけるオゾン前処理効果及びエネルギー評価   小松俊哉 産業廃棄物排出量に占める下水汚泥の割合は約20%に達している.下水汚泥を有効に使う方法として嫌気性消化法がある.下水汚泥の中で余剰汚泥は初沈汚泥と比べ難分解性であり回収メタン量が少ないのが欠点とされている.余剰汚泥の分解性を向上させる前処理方法としてオゾン前処理があり,それによりメタン発酵性や脱水性を向上させることが期待されている.本研究では余剰汚泥に着目し,異なる濃縮方法の濃縮余剰汚泥に対してオゾン前処理を実施し,回分式及び連続式嫌気性消化実験を行い,オゾン前処理効果を明らかにすることを目的とした.また運転終了後の消化汚泥を用いて脱水試験を実施し,エネルギー収支およびコストも試算した. 最初に濃縮方法の異なる2箇所の浄化センター(A:凝集剤無,B:凝集剤有)の濃縮余剰汚泥をオゾン処理し,余剰汚泥単独で回分実験及び連続実験を行った.回分実験から凝集剤を用いている汚泥ではオゾン処理系でのバイオガス発生の初期阻害の傾向が顕著であったが,連続実験において,馴致期間を十分に設けることで改善されることが明らかとなり,同じオゾン吸収量で同程度のオゾン処理効果が得られ,オゾン処理の汎用性が示唆された. 続いて,初沈汚泥とオゾン処理余剰汚泥を混合し,基質として投入した連続実験を滞留日数(HRT)25日,15日で実施した.オゾン処理系における投入VS当たりのバイオガス発生量,未処理系に対する増加率はHRT25日では,658Nml/g-VS,28%であり,HRT15日の運転では,589Nml/g-VS,25%であった.VS分解率も未処理系に比べて3~4%向上した.HRT25日未処理系とHRT15日オゾン処理系をVS分解率で比較すると,容積負荷が1.67倍にも関わらず,高いバイオガス生成活性とVS分解率が得られたことから,オゾン処理は高負荷運転を行う上で有利であることが示された. 連続実験終了後,脱水試験を実施した.オゾン処理による含水率の低下と,脱水汚泥の減容効果(20~30%の減少)が確認出来た.このことからオゾン処理は汚泥の減容についても有利であることが示された. 本研究では実下水処理場での適用性を評価するため,複数の文献を参考にエネルギー収支の試算も行った.オゾン処理にかかるエネルギーが大きく,文献値も大きく異なるため不確実ではあるが,全体のエネルギー収支がプラスになる可能性が示された.今後は試算データの緻密化及び,省エネオゾン発生装置と効率的なオゾン処理技術,オゾン吸収量の選定が重要と考えられる.