笠原海斗 1987年千葉県東方沖地震における東京都23区の地震動再現の試み 池田隆明 現在の日本では,首都直下型地震の発生が懸念されており,地震被害想定によると1万人規模の人的被害が想定されている.そのため,過去の地震における地震動や被害の状況を把握することは今後の地震防災において重要である.そして,1987年千葉県東方沖地震は房総半島沖を震源とする地震で,東地方の比較的広範囲で大きな被害を引き起こした.そこで本研究では,千葉県東方沖地震を対象に強震動評価技術を用いて,東京都23区の地震動の再現を試みた. 震源モデルを作成するため,初めに,この地震の観測記録を調べた.次に,断層モデルを選定した.そして,強震動予測手法のEMPRのパラメータの設定を行い,千葉港と川崎港の地点で波形を作成した.EMPR(Earthquake Motion Prediction on Rock)とは,大規模断層を小断層に分割し,断層の大きさ,破壊方向,破壊速度,破壊様式の影響を考慮でき,地震動波形も描写可能な強震動予測手法のことである. 千葉県東方沖地震の観測記録を最も再現できるものを選ぶ.そのために,作成した震源モデルから,①波形の長さ,②観測記録と計算結果の最大加速度と最大速度の残差の2乗,③応答スペクトルの3つを条件に,千葉港,川崎港から5つずつ選びだした.その2地点における5つのモデルの中から被ったモデルを本研究の震源モデルとした. その震源モデルを用いて東京都23区の強震動評価を行った.具体的に,計算結果の最大速度と東京都23区それぞれの地盤増幅率を掛け算した.その値ごとに色分けをしてマップを作成した.東京都23区は江戸川,多摩川の間に位置し,中央に荒川と隅田川が流れている.また,太平洋に面した地域であるため,海沿いの区には埋め立て地が存在する.23区の東側が西側に比べ,地表面最大速度が大きくなっていた.これは江戸川沿いと,北区から中央区にかけて流れる荒川,隅田川沿いに分布しているためであると考える.また,大田区に関しても,多摩川と太平洋に面している部分が多いことが分かる.西側が東側に比べて地表面最大速度が小さくなっている要因としては,比較的内陸に位置し,埋め立て地が少ないためであると考える. 今後,本研究の結果を踏まえてさらにEMPRのパラメータを変更させながら使い,関東地方の強震動評価を進めることは,これから起きるであろう首都圏直下地震の被害の軽減に繋がるだけでなく,日本全土の地震被害の軽減に貢献できると考える.