鹿ノ内渓介 道路橋の伸縮継手補修部に発生するひび割れの機構解明 下村匠 高速道路の維持管理や緊急時・災害時の道路の早期開放の観点から,道路橋の補修・補強材料として,超速硬コンクリートは幅広く用いられている.近年,施工方法の最適化や整備が行われているが,超速硬コンクリートはひび割れ発生のリスクが高いという問題点がある.しかしながら,ひび割れ発生の原因について詳細に検討した事例がほとんどないという現状である.特に,超速硬コンクリートに特徴的な極初期から初期材齢(数分から3日程度)にかけて発生するひび割れに関して,主要因の特定や関連物性の検討も含め,明らかにしていく必要がある.本研究では,超速硬コンクリートの使用用途の中でも,特に伸縮装置の継手補修部に発生するひび割れに焦点を当て研究を進める.本研究の目的は,伸縮装置の継手補修部に発生するひび割れに着目し,超速硬コンクリートのひび割れ発生の原因を明らかにすることである. 伸縮装置の継手補修部に発生するひび割れは,1日以内に発生するひび割れと3日以降に発生するひび割れの2つの期間に分かれていることが確認されている.「誘導板直上のひび割れ再現実験」と「内部鉄筋による軸方向の拘束実験」の2つの実験を行い,ひび割れ発生原因の検討をした. 1日以内に発生するひび割れの発生原因は,誘導板付近の超速硬コンクリートの自己収縮により,ブリーディングによる沈下に似た現象が起きているからだと考えられる.誘導板直上の超速硬コンクリートは,かぶりが薄いために周囲と沈下量が異なり,硬化収縮の段階で引張力が生じる.この時点で完全に硬化していないため,引張に対する強度が不十分な状態であり,ひび割れが発生すると考えられる.ひび割れ発生時の自己収縮は収縮挙動を示しており,自己収縮はひび割れ発生の原因であると考えられる. 3日以降に発生するひび割れの発生原因は,伸縮装置の継手補修部に埋め込まれるの補強鉄筋に超速硬コンクリートの収縮が拘束されるために発生すると考えていたが,実験室でひび割れの再現ができなった.ひび割れ観察中の自己収縮の収縮挙動はほとんど変化していなかったため,ひび割れが発生するために必要な拘束力が発現しなかったと考えられる.実際の現場と実験室の再現実験では,寸法の違いや誘導板の有無,実験環境の条件などの違いがある.今後はこれらの実験条件の違いを検討していく必要がある.