Amarkhuu Tamir 可撓性踏掛版の力学的挙動に関する解析的検討 岩崎英治  規模の大きな地震が生じた際に橋の複雑な挙動や流動化による地盤変状等の影響により基礎地盤や橋台背面アプローチ部の盛土等が沈下し路面に著しい段差が生じる可能性が高い.基礎地盤や橋台背面アプローチ部が沈下した場合でも,これらの沈下に追随しつつ橋台との一体化を保つことが可能な対策を行う必要がある.この対策として踏掛版のない既設橋へ容易に設置が可能で,施工時間が短いといった特徴を持つ可撓性踏掛版に対する需要が大幅に増加している.従来,可撓性踏掛版について先行研究や実物大規模の段差抑制効果試験が行われているが,技術的なバックデータが不足していることから,信頼性の高い構造力学的な解析が求められている.そこで,本研究では大規模地震によって橋台背面アプローチ部に大段差が生じた場合の可撓性踏掛版の力学的挙動を予測することを目的に,FEMプログラムで解析を行った.    可撓性踏掛版の目標性能としては大規模地震による50cmの段差に対応できるものとした.FEM解析で得られた段差50cmの場合の可撓性踏掛版の変状は,路面をなだらかに変形させ,車両等が通過できるような形であると推定できる.しかしながら,可撓性踏掛版上に大型車荷重を載荷したときの安定性を確認した結果,可撓性踏掛版を橋台背面アプローチ部に固定するために用いられる断面寸法L-75×100×7の不等辺山形鋼に損傷が生じることが予測された.そこで,不等辺山形鋼の厚さを大きくし,不等辺山形鋼に生じる応力について解析を行った.    不等辺山形鋼の厚さを10mmと13mmとし,可撓性踏掛版に大型車荷重がかかった際に不等辺山形鋼に発生する応力を確認した.厚さ 10mmの場合は,荷重と可撓性踏掛版の自重によって不等辺山形鋼に生じる応力は段差50cmまでの過程において200 N/mm2前後だった.一方,厚さ13mmの場合の応力は145 N/mm2前後であり,いずれの場合も降伏点245 N/mm2より以下だった.したがって,可撓性踏掛版に用いられる不等辺山形鋼の厚さは10mm以上が必要であると検討した.    今回,可撓性踏掛版の自重による応力に加え,不等辺山形鋼の直上に大型車荷重がかかった際に発生する応力のみについて考えた.今後,可撓性踏掛版の中途に大型車荷重が載った場合に各部材に発生する応力やそれに対して必要な強度について確認する必要がある.