CHRISTIAN ALEJANDRO MENDOZA IBARRA 高力ボルトの腐食減肉による軸応力の評価についての解析的研究 岩崎 英治 鋼構造物において、特に腐食劣化が問題となっており、鋼橋の腐食部位の中でも、高力ボルト継手部は他の構造物部位に比べて、早期に著しく腐食減肉している場合が多い. その理由としては、ナット部および六角度ボルト頭部は複雑な形状で、塗装被膜が均一になりにくいことや、腐食の原因となる飛来塩分が付着しやすいなので、腐食が発生しやすい. 腐食減肉した高力六角ボルトは、その軸力の低下は懸念されて、残存軸力特性の解明が重要である. しかしながら、既往研究では、ネジ部を正確に考慮しなかったが、ネジ部を正確に考慮したら、軸応力低下に影響を与える可能性がある. 例えば、ネジ部の影響でナットを押し広げる力が作用することとし、その押し広げる力の影響で軸応力が変わる可能性がある. そこで、本研究では、ネジ部に正確を考慮すると、腐食による軸応力低下量がどれぐらい大きさになるのか検討する. FEMモデルでネジ部を正確に考慮すると、腐食による軸応力低下を検討し、ボルト継手部における腐食減肉の発生とボルト軸応力低下量の関連性についての検討を行うとともに,腐食減肉の発生位置による影響についても検討を行った. 本研究では、ナット部における腐食は大きな偏りを持たずに全方向から進展する傾向があるため、腐食に伴う応力変化についても同心円状に発生するものと仮定することで、軸対称の問題とした. ネジ部の影響と解析結果の妥当性の検討するために、本研究で作成したモデルは既往研究の解析条件に基づいて、解析を行った. その結果として、実験結果の傾向と比べると、似ている傾向が得られた.したがって、ネジ部の影響とモデルの妥当性を確認した. 結果として、ナットでの腐食減肉に起因する、ボルト軸応力低下については、ナット、鋼材のいずれか、あるいは複合的に発生する、部分的な塑性ひずみが要因となっていること. および、ナットにおいて生じる腐食減肉について、その発生位置によりボルト軸応力低下量は大きく異なることが明らかとなった. また、これらの結果から、ナットの腐食について、それぞれの座金との接触面付近に腐食減肉が発生している場合には、ボルト軸応力の大幅な低下が生じている可能性があり、早急な対応が求められるが、一方で、その他の箇所に生じている腐食減肉については、腐食状況について継続して観察することが求められるが、ボルト軸応力低下については大きな懸念はないといえる. 点検するときは座金接触部分の腐食量を正確に測る必要がある.