橋本啓太 K-NET長岡における弱震度データに関する基礎的研究 宮木 康幸 地震大国日本では,多くの地点で地盤構造や地盤の振動特性を把握することが急務である。そのため,ボーリング調査が行われるが,この調査は,大掛かりでコストが高く,時間もかかり,広範囲にわたって調査をするのは難しい.そこで,時と場所を選ばず,低コストで簡単に観測が可能である常時微動計測が広く利用され,H/Vスペクトルから地盤構造や地盤の振動特性を推定することが行われている。  一方,大きな地震が発生した際に,その震源やマグニチュードを知り,地震防災に寄与するため,独立行政法人・防災科学技術研究所では強震観測網(K-NET,KiK-net) を常時運用している。その観測地点では,ボーリング調査が行われ,地盤構造や地盤の振動特性が明確にされていることが多い。  しかし,K-NET,KiK-netで記録されたデータと常時微動データの関係については,はっきりしない点が多い。一つには,常時微動はランダム方向からの表面波を計測しており,その大きさは加速度に換算して高々1gal程度であり、強震観測網では数十galから数千galの地震動を対象としていることが挙げられる。さらに,強震観測網では大きな地震が発生した時のみ記録しているが,常時微動ではその時以外の時間に計測されていることが挙げられる  本研究では,震源の位置は周波数スペクトルに影響するのか,H/Vスペクトルの算定は可能かということを検討事項としK-NET長岡の弱震度データの特性を明らかにすることを研究目的とした.  研究方法としては, K-NET長岡から弱震動データを100個以上ダウンロードし,緯度経度から観測点までの距離方位角を算出する.次にS波が到達したと考えられる時刻から2048個データを抽出し,FFT処理を行いデータを平滑化し,H/Vスペクトルの算出をし,最後に卓越周波数の検討を行っていく. 結果, K-NET長岡で観測された地震動データからH/Vスペクトルを算出した結果,卓越周波数が2.5〜3.5Hzとなったデータが103個のデータのうち34個確認できた.EW成分の地震波からの卓越周波数は5〜7Hzとなったデータが103個のデータのうち61個確認できた.常時微動データから算出したH/Vスペクトの卓越周波数が2.97Hzであることと,K-NET長岡で観測された地震動のH/Vスペクトの卓越周波数が2.5〜3.5Hzであったデータが多かったことから,この二つには類似性があることが分かった.方向を八方向に分けると,他の方位角では卓越周波数に傾向が見られたがN-NEとNW-N とNE-Eでは,卓越周波数にはばらつきが多いということがわかった.また震央の距離で分類したが, 距離による卓越周波数についての特徴は見られなかった.