田辺陽希 含水比の変動が軌道路床粘性土の支持力に及ぼす影響に関する研究 高橋修  1960年以前に軟弱地盤上に敷設されたバラスト軌道は,列車の通過によって地盤沈下や墳泥が発生するため,軌道保守量が増大している.そのため,路盤改良の適用が望まれているが,路盤材の締固めを必要とする路盤改良工法では最終列車から始発列車の短い作業時間では施工が難しいという現状であった.そこで後充填式グラウト充填路盤改良工法が開発された.しかし,この工法には設計上の問題があった.地盤支持力に応じて路盤改良厚を設計するのだが,雨が降った場合などは地盤の含水比が増加し,地盤支持力が変動するため,最適な路盤改良厚を設計することが出来なくなる.したがって本研究では,含水比の変動が地盤支持力に及ぼす影響を明らかにすることによって,含水比が変化した場合においても,最適な路盤改良厚を設計できるようにすることが目的である.  排水性が悪い,支持剛性が小さいといった特徴を持つ荒木田粘土を用いて実験を行った.含水比ごとの地盤反力係数K30値を求めるため,含水比19,21,23,25%を目標に調整した荒木田粘土を用いて土槽を構築し,構築した土槽の地盤反力係数K30値を小型FWDを用いて計測した.実際に土槽を構築した際の含水比は,18.20,21.06,22.96,25.27%であった.得られた結果は実験前に予想していた値よりも全体的に大きな値であった。地盤反力係数K30値が大きくなったのは使用した土槽が小さかったことと,土槽の構築方法に問題があったことが原因として考えられる.しかし,含水比の増加に伴って,地盤反力係数K30値が減少するという相関関係は確認できた.  小型FWDによって測定した含水比ごとの地盤反力係数K30値のデータを用いてGAMESで解析をし,含水比ごとの最適な路盤改良厚の求めた.解析した結果,最適な路盤改良厚は含水比18.20%では0mm,含水比21.06%では0mm,22.96%では100mm,25.27%では140mmという結果になった.含水比18.20%と21.06%において最適な路盤改良厚が0mmとなったのは小型FWDによる地盤反力係数K30値の測定結果が大きくなったことが原因である.正確な最適路盤改良厚を求めることが出来たとは言い難いが,含水比の増加に伴って,最適路盤改良厚が増加していくことは確認できた.  本研究から,含水比の増加に伴って地盤反力係数K30値が減少する,含水比の増加に伴って最適路盤改良層の厚さが増加するということは確認できた.しかし,当初の目的であった含水比ごとの最適な路盤改良厚を求めることはできなかった.