NGO PHU NHAT   半円形供試体曲げ試験におけるアスコンひび割れ抵抗性の評価パラメータに関する検討   高橋 修    アスコン層に発生したき裂は,荷重や温度変化等の作用によって徐々に面的なひび割れへと進展し,アスファルト舗装の構造体としての強度を低下させる.アスコンのひび割れ抵抗性を評価する手法として,半円形供試体曲げ試験(SCB試験)が欧州と米国で標準化されている.しかしながら,これらのSCB試験は0℃以下の低温条件でのひび割れ抵抗性を簡便に評価するもので,常温域でのひび割れ抵抗性能は評価することができない.一般に,アスコンのき裂発生,き裂進展において,低温条件でのき裂は脆性破壊,低温から常温の条件でのき裂は靭性破壊と見なされている.脆性破壊のほうはこれまで多くの検討が行われた経緯があり,既往のSCB試験や静的曲げ試験が開発されている.これに対して靭性破壊のほうは,一部の研究者が限られた温度条件で実施した事例等が報告されているに過ぎず,実績が乏しいのが実状である.そのため,常温条件でのアスコンのひび割れ抵抗性を簡便に評価する方法が求められている.  そこで,本研究では,アスコンの靭性破壊のメカニズムをひび割れ発生とひび割れ進展の二つのステージに分け,SCB試験から得られる特性パラメータで評価することを検討した.ひび割れ発生のステージに関するパラメータとして破壊エネルギ(Jc)を,ひび割れ進展のステージに関するパラメータとしてき裂先端の開口変位(CTOD)と開口角度(CTOA)を選定し,それぞれのステージの特性パラメータとして妥当であるか否か評価した.靭性破壊を再現できるように試験温度は10℃~30oCの常温域とし,特性パラメータの精度向上を見込んでSCB試験の疑似き裂に3とおりの深さの供試体を使用した.また,CTODとCTOAは,変位ゲージでSCB試験中に測定できるように工夫した.JcはSCB試験の荷重−変位曲線から求められるが,試験法の汎用性を考慮し,CTODとCTOAは変位ゲージからではなく,Jcから推定する方法についても検討した.  その結果,以下の知見が得られた.一般にアスコンは温度が高いほどひび割れが発生しやすくなるが,温度が高いほどJcの値は減少し,これらの相関性も確認された.このことより,Jcはひび割れ発生の程度を評価できるパラメータとして妥当であると判断された.変位ゲージで実測したCTODとCTOAについては,温度のみならず,疑似き裂の深さによっても影響されることがわかった.そして,CTOAが小さいほどアスコンのひび割れ進展が速くなる傾向が確認された.そのため,CTODとCTOAはひび割れ進展の評価パラメータとして有効である.また,Jcから求めたCTODとCTOAはこれらの実測値と相関があり,Jcから間接的に求める可能性が示唆された.