高安あずな 点検・補修実績に基づく橋梁の健全度および維持管理費予測手法の検討 鳩山紀一郎  本研究では地方自治体において,橋梁が劣化した際,将来的に補修費がどの程度必要なのかを把握するために,健全度自然低下傾向および補修費の予測手法の検討を行った.  橋梁点検においては,橋梁の損傷や性能といった健全性を健全度という指標で評価しており,新潟県では独自に7段階の健全度区分が用いられている.そのため,本研究でもこの7段階の健全度区分を用いることにした.  まず,健全度自然低下傾向を予測するにあたり,維持管理や補修が一切行われない状態での橋梁の健全度の経年変化の傾向を把握する必要がある.本研究では,橋種別・健全度別の橋齢分布を用いてこれの把握を試みた.まず,隣り合う健全度間のタイムラグ相関分析を行うことにより,橋種ごとに橋梁の健全度が遷移する標準的期間(健全度間遷移期間)を明らかにした.しかし,これだけではそもそも橋梁が架設当初の状態から健全度低下し始める標準的期間(初期性能維持期間)が分からない.そのため本研究では,いくつかの方法を用いてこれを試算したが,補修された可能性のある橋梁が除外でき,橋齢の分布形状を反映しやすいことから,累積相対度数を用いて初期性能維持期間を求める方法を妥当と判断した.具体的には,各橋種について,初期の健全度の累積相対度数が全健全度の累積相対度数と最も乖離する橋齢を初期性能維持期間と考えた.これと健全度間遷移期間を組み合わせることにより,各橋種の健全度自然低下傾向を求めた.  次に,補修費予測式の作成にあたり,対象とする都市として新潟市(N=113)と長岡市(N=28)を選定した.先行研究では橋種によらず,橋梁面積と補修費に基づいて予測式を作成していたが,サンプル数が増え橋種別の分析が可能となったため,本研究ではコンクリート(BOX,PC,RC)橋と鋼橋に分けて補修費予測式の推定を行った.今回も,補修費予測式に用いた費用関数は面積A,パラメターαとしたc(A)=α×√A とした.なお,7段階の健全度区分で予測式を作成すると十分なサンプルが確保できないため,鋼橋とコンクリート橋をそれぞれ健全度のグループ分けをし,各グループで回帰分析を行った.その結果,橋梁の健全度低下に伴い補修費の増加が見られる,ある程度合理的と考えられる予測式を得ることができた.