王 凱 GPSデータを用いたタクシー運行の効率化と生産性向上に関する研究 佐野 可寸志 地方都市における公共交通の利用数は減少の一途であり,バス車両の使用よりはタクシー車両を使用した方が効率的なケースが,今後増加していくと想定される一方で,タクシードライバーの確保は難しく,タクシー営業所等の撤退が進みつつある.また,高齢化の進展に伴うドア・ツー・ドア輸送のニーズが高いが,運賃の高さがネックとなり,その需要は十分には顕在化していない.地方タクシーを持続させるには,実車時間の割合が低いといわれているタクシー運行効率の向上と,値下げによる利用者の増加が必要である.そこで本研究では,GPSデータを用いたタクシーの運行実態を可視化し,事前予約に基づくタクシー運行効率化の効果を計算することによって運行効率化の可能性と生産性向上について検討する. 長岡市にあるタクシー会社の平均的な需要がある2018年4月4日(水)の実車である436トリップを対象に,事前予約という前提条件で,ヒューリスティックな解法の一つである挿入法を用いて必要なタクシーの台数と最適な巡回ルートを導出し,費用削減の効果を計算した.また,当該タクシー会社の長岡市でのシェアは約20%であり,2018年4月4日を含む週の平日5日間の(4月2日~6日)GPSデータを,ある一日の長岡市全体のタクシー需要と仮定し,タクシー会社が共同で配車するという前提で,どの程度費用が削減されるかを検討した.結果として,事前予約が100%という非常に理想的な状態では費用が約1/3削減され,さらに共同配車事業が導入された場合は費用が約半分に削減される可能性を確認した. また,長岡市に居住する人を対象として普段の外出行動およびそれに対する予約タクシーの利用意向についてアンケート調査を行った.利用意向を分析を行い,既存タクシー,前日予約タクシー,相乗りタクシーの3つの場合に割引率に応じた長岡地区の需要を推測した.事前予約では,2割引の時に約1200利用者数になり,4割引時に利用回数は約3500トリップまでに増加したことを示し,割引率に応じた需要増加を確認した.外出目的別や男女等によって需要増加量の違いも確認された.そして,運行効率化により費用削減効果とインセンティブ施策の効果を合わせて見ると,利用者の料金を2割引されるより4割引されると利用者数が確保することができ,効果が高いことが確認され,利益が生じる可能性が高いと確認した.生産性向上の可能性があることが分かった.