成田光裕 空き家所有者を対象とした空き家提供意向の要因分析 佐野可寸志 全国各地で空き家が増加しているが,空き家所有者が空き家提供を行っていないことが多いため,移住希望者が容易に移住できない状況に陥っている.このような問題から本研究では,「空き家提供促進施策の実態を調査し,有効な促進施策に関する知見を得ること」,「空き家所有者の空き家提供意向を調査し,提供意向に影響を与えている要因を明らかにすること」の2つを研究目的とする.また,2つの研究目的を踏まえ,空き家提供促進に向けた施策を提案する.はじめに,有効な空き家提供施策の知見を得るため,空き家提供施策の体系的整理を行った.整理の結果,地域住民をはじめとした第三者の連携・支援を施策として行っている地域は有用であると考えた.次に施策化されていなくても地域住民等の協力によって空き家提供を行った事例を調査するのを主な目的として,新潟県小千谷市を対象にインタビュー調査を行った.それに加え,施策として地域住民をはじめとした第三者の連携・支援を行っている愛知県豊田市にもインタビュー調査を行った.2つのインタビューの結果,自分から空き家提供に関する行動をしない空き家所有者に対しても効果があるという点から,有効な施策と考えた.また,2つのアンケート結果からの分析を実施した.1つ目は長岡市が行った「H29長岡市空き家所有者アンケート調査」を分析し,空き家提供意向がある空き家所有者にはどのような理由が多いかを調査した.2つ目は本研究で行った「意識変容可能性の調査」のアンケート結果を分析し,こちらから新たに情報を提示した際の空き家提供意向の変化に着目して調査した.「H29長岡市空き家所有者アンケート調査」の分析では,提供意向がある所有者は「維持管理費用が10万円以上の所有者」,「空き家年数が1年未満の所有者」であるという結果になった.「意識変容可能性の調査」の分析では,現状の情報である「居住できる空き家より移住希望者が多い」,「中古建て・古民家の希望者は多い」の2つに対して特に提供意向が上昇している傾向になった.以上の結果から提供意向ありの所有者を対象とした施策が一番有効であるとした.本研究で行った施策の提案の中で一番優先順位の高い施策として,「地域住民からの現状情報の提示」を提案した.内容としては,地域住民の人に空き家提供施策に協力してもらい,空き家所有者に直接,現状の情報の伝達をメインとした情報提示を行うというものである.