NGUYEN VIET THANH アルカリ処理による濃縮余剰汚泥のバイオガス増産に関する検討 小松俊哉 姫野修司  下水汚泥のエネルギー及び減量化に,嫌気性消化(メタン発酵)は広く採用されている.下水処理施設から発生する汚泥のうち,余剰汚泥は活性汚泥法の最終沈殿タンクで発生し,微生物細胞が主体であるため,易分解性有機物質の濃度は低く,メタン発酵の効率は低い.そのため,簡易かつ低コストで汚泥を分解・可溶化し,消化を促進させる方法としてNaOHによるアルカリ前処理を行う方法がある.そこで本研究では,アルカリによる処理を行うことで,難分解性である余剰汚泥に対して固形有機物質の分解を行い,バイオガス生成量の増大を図ることを目的とする.具体的には,メタン生成に効果的なアルカリ前処理条件を明らかにすること,これまで研究例が少ない連続式嫌気性消化実験におけるアルカリ前処理の効果を明らかにすることを目的として実験を行った.  可溶化実験では室温にアルカリ処理でのアルカリ添加量による分解性を比較を,2,4,6,24時間の間隔で評価を行った.TS2%汚泥と高濃度の濃縮余剰汚泥ともに,溶解性CODの増加挙動からアルカリ濃度0.1N,可溶化時間6hが効率的な可溶化条件であった.  回分実験では室温にて6時間アルカリ処理したものをサンプリングし,アルカリの濃度は0.05N ,0.1N で,中和しない汚泥と中和した汚泥を用いて回分式実験を20日間実施した.中和した0.1Nの系で最も効果が見られた.中和しない0.1Nの系でもメタンガス増大の効果がみられた.また,アルカリ処理ではVS分解率も高くなることが確認された.  連続実験ではバイアル瓶に全液量300mL及び基質を2日毎に20g引き抜き・投入を行い,連続実験を実施した.系列は未処理及び中和した汚泥と中和しない汚泥で滞留日数を30日で実施して,運転が安定したら(22日目以降),2日毎に30g引き抜き・投入を行い,滞留日数を20日に短縮した.アルカリ前処理の効果が認められた.発酵への阻害は見られず,中和あり0.1Nの系でバイオガス発生量が増加している事が確認された.さらに,長期間の運転により中和なし・高pH条件においても安定した運転が行え,メタンガス発生量は中和ありの系と同等であった.VS除去率もアルカリ処理系の方が高かった.したがって,アルカリ前処理は,運転初期から安定した運転を行うためには中和剤として酸の添加が必要であるが,メタン増産に有用な方法であると考えられる.