宮崎 光 下水汚泥の集約・共同処理による事業性改善に関する研究 姫野修司 小松俊哉 日本の下水道事業は今後,人口減少に伴う収入減少と施設老朽化による更新費用の増大によって事業性が悪化することが予想されている.また,下水汚泥はバイオマスでありこれを再生可能エネルギーとして用いることで循環型社会形成を目指す試みも全国で進められている.本研究では下水汚泥の集約共同処理の事業性改善効果を「現状調査」,「新潟県内における事業検討」,「汚泥重金属が事業に与える影響分析」を通じ明らかにした.現状調査では固形燃料化事業の先行例と新潟県内の下水道事業の現状について公開されている資料から調査を実施した.新潟県内における事業検討では現状調査で得られた固形燃料化事業の事業費と処理規模の関係や,新潟市における発生汚泥量を基に新潟市内の下水汚泥を集約,共同処理した場合の汚泥処分単価及びCO2収支を試算し,経済的,環境的効果について評価した. 汚泥重金属が事業に与える影響分析では主に県内5ヵ所の処理場の汚泥で汚泥中重金属含有量試験と灰化汚泥溶出試験を行った.その際には環境省等のマニュアルに沿った前処理を行い,高周波プラズマ発光分析法を用いて試験した. 現状調査により固形燃料化事業ではスケールメリットが汚泥処分単価に影響することが分かった.そのため汚泥集約対象地域の広域化によって一日当たりの処理量を増やすことで事業性改善が可能であることが分かった. 新潟市内における事業検討では燃料化を行う事で新潟市内8か所の処理場の汚泥を集約,共同処理する想定の下,試算をおこなった結果,汚泥処分単価は現状の20,000〜30,000円/tから15,569〜19,542円/tに減少しCO2は年間7381t削減可能であることが分かった. 汚泥中の重金属について分析した結果,4か所の処理場の灰化汚泥で廃棄物処理法に基づくひ素の溶出基準値を超える可能性がある事が分かった.また,火力発電所等の有効利用先における石炭に対する固形燃料の混焼率は本検討で想定した熱量の場合,質量比17%を超えるとボイラ内で溶融した灰の固着に注意すべきである.本検討の燃料製造量では最高でも質量比2.2%でありボイラへの影響は考えにくいが,混焼灰のセメント原料化等を行う際には分析を要すると考える. 下水汚泥を固形燃料化によって集約共同処理することで下水道事業の事業性改善が可能であり, CO2削減に貢献できることが分かった.集約,共同処理の全国的な普及によって持続可能な下水道事業の構築が望まれる.