穴牛 康太 衛星指標画像を用いた積雪域自動判別手法の検討 高橋 一義 新潟県は世界有数の豪雪地帯であり,雪による災害など甚大な被害を受けている.しかし,その一方で観光・リクリエーションへの活用や重要な水資源としての需要もある.このような雪の二面性から,雪害防止対策だけでなく雪の利用という観点からも積雪量の推定が必要である. 積雪の多くは山岳地帯に分布しており,人が山岳地帯に行き積雪を広域的に観測するためには,多大な人的・経済的資源が必要となる.また,雪崩や遭難といった危険が伴う.このような背景から,衛星画像などのリモートセンシング技術を活用した研究が進められている. 西原・谷瀬ら(2019年)の研究では,人工衛星データから抽出した積雪域から消雪した面積割合と融雪の進捗率が概ね一致していることが報告されており,積雪域を把握することが積雪量を把握することにつながると考えられる. 衛星画像を用いた積雪域の把握において雲は大きな影響を及ぼす.可視光域は,雪と雲の分光特性が類似しているため判別が困難である.そこで本研究では,指標画像を用いて,複数の人工衛星に対応した,積雪域の自動判別手法を検討することを目的とする. Landsat8にはピクセルごとの品質情報が付与されたpixel_qaバンドが提供されており,雪や雲が分類されていることから, Landsat8の衛星データを使用し,教師データを作成した.教師データは NDVI, NDSI, WhiteNessの3つの指標を合成した画像を教師データとして扱う. NDVI, NDSI, WhiteNessはそれぞれ,植物,雪,白色度の反射を強調した画像である.  判別を行うためのモデルを構築するにあたって,入力サイズが学習精度および判別精度に及ぼす影響を考慮し,64×64サイズで入力する形の判別モデルを構築した.その結果,二値分類,三値分類,四値分類においてそれぞれ,98%,96%,78%の学習精度が得られた.  構築した判別モデルにLandasat8における未知データを与え判別を行った結果SnowとCloudは概ね正しく判別されており,三値判別の結果がSnowとCloudにおける判別がより正確に行われていた.また,目視判別における評価を行った結果,三値判別における精度が最も高かった.このことから与えるラベルを増やすことで詳細な情報を学習できるため精度が向上すると考えられるがラベル数には最適な数が存在すると考えられる.  判別モデルの汎用性を評価するために,Sentinel-2とMODISにおける指標画像を用いて判別を行い,同様に目視判別による評価を行った結果,判別精度に差異が生じた.これは,使用する衛星データによって少しずつ波長帯が異なり,指標画像に多少の差異が生じるためであると考えられる.