山根 怜 UAV搭載LiDARによる水稲草丈推定に関する検討 高橋 一義 水稲の生育状況を把握し適切な栽培管理を行うことは、高品質なコメの安定生産のために非常に重要である。これにより水稲の生育の過不足を確認し、施肥時期の判断を行っている。この作業は手作業のため、多大な労力と時間を要し、圃場広域を調査対象とすることは困難である。調査結果の再現性を高めることや、より広範囲の計測を行うため、リモートセンシング技術を用いた研究が進められている。衛星による地域単位の広範囲を対象とする生育モニタリングでは、天候障害による計測頻度の低下などの問題がある。それを補完するために、UAVによるリモートセンシングが研究されている。これらのリモートセンシングで利用されるものは分光情報であることが多い。より直接的に水稲の構造を計測する技術として挙げられる能動型光学センサが、すでに土木・測量分野で広く利用されているLiDAR(Light Detection and Ranging)である。既往研究にて、より広域の水稲へLiDAR計測による草丈推定手法を適用するためには、計測高度によるレーザフットプリント径の変化を考慮する必要がある可能性が示唆された。計測高度が上がっても、既往研究におけるレーザフットプリント径と同程度の大きさとなれば、車載用LiDARによる計測であっても、草丈推定手法を適用できる可能性がある。本研究では、Phanらによって提案された、水田直上からの LiDAR 計測で取得した水稲群落の3次元点群の解析から計算される「LiDAR 計測された群落層厚さ(rD)」から草丈を推定する手法をより広範囲に適用するために、新たなLiDAR(Velodyne VLP-16)を搭載したUAVシステム(DJI M600)を利用した。このシステムによって既往研究と同程度のレーザフットプリント径になるように計測高度を設定した計測を行い、草丈rD推定手法を適用した。その結果、計測高度10mにおける群落層厚さの増加と草丈の増加に線形関係が確認できた。このことから、LiDARのレーザフットプリント径を考慮した計測高度を設定すれば、Phanらの水稲草丈推定手法が適用できることが分かった。また、既往研究よりも長い期間の計測を行ったことで、推定誤差に影響が出た。草丈推定手法の適用期間はPhanらの設定した通り、出穂期前までとすることが望ましいことが分かった。また、同様のコースを異なる高度にて計測を行った結果、レーザフットプリント径が大きくなるとrDが小さくなる可能性が示唆された。また、今回のシステムでは計測高度20mにおいても草丈推定手法が適用できる可能性が示唆された。