長谷川歩 ユーザビリティ評価にもとづく河川水位表示に関する研究 松田曜子 現在提供されている河川水位雨量表示ウェブサイトにおいて,ユーザビリティを考慮して設計されたケースは少なく,本当にユーザーが必要としている情報を満足度の高い形式で表示できていない可能性がある.そこで本論文では,2017年7月に避難勧告が発令された,新潟県長岡市摂田屋5丁目地域住民を対象にユーザビリティ評価にもとづく住民からの関心の高い河川水位雨量表示の作成及び評価を行うことを目的とした. 研究は,ユーザーからの満足度の高い河川水位雨量を作成するため,人間中心設計のHCDサイクルの手順に従って研究を行った.HCDサイクルは,①利用状況の把握,②ユーザー要求の明確化,③ユーザー要求を満足させる設計による解決策の作成,④要求事項に対する設計の評価の4プロセスから構成されており,最終的に,作成したプロトタイプがユーザーの要求を満たしているかユーザビリティ評価を行う手法である.本研究では,ユーザビリティテストを用いてユーザビリティ評価を行った. まず初めに,河川水位雨量表示の利用状況の把握するため,アンケート調査を実施した.その結果,水位情報を入手する手段としてインターネットを用いる住民は多く若い世代であることを明らかとした.続いて,河川水位雨量表示のコンテンツの把握をするため,各都道府県や各河川事務所が提供している河川水位雨量表示において,代表的なコンテンツの使用率を調査した.その結果,水位グラフでは「河川横断面図」を表示する形式がよく使われる表示形式であることを明らかにした.次に,摂田屋5丁目住民の河川水位雨量表示への要求を明確化し,問題点を抽出するためヒアリング調査を行った.その結果,普段から河川水位雨量表示を調べるか否かによって情報に対する認知度及び理解度に大きな差が出ることが明らかとなった. 最後に,判明した問題点にもとづき河川水位雨量表示の改良版を2種類(水位グラフ強調型,カメラ画像強調型)作成し,改良版との比較を行うために「新潟県河川防災情報システム」をもとに作成した既存型と比較評価を行った.ユーザビリティテストの結果から改良型は既存型と比べて「満足度」及び,「比較評価」においても高い評価を得た.また,各河川水位表示に対する意見から「堤防上端からの表示のため,危険度が分かりやすい」「色で状態が明記されているため分かりやすい」など,ユーザー要求をもとに改善した項目が評価されていることから,本研究で作成した改良型はユーザビリティの高い河川水位表示であると言える.