陽川舜騎 中部地方における中気候区分の地域的,時間的変化について 熊倉俊郎  一般的に,気候は「十分に長い時間について平均した大気の状態」と定義されている.(文部科学省,2013)中気候の地域区分の現状としては,気候モデルによる気温,降水量の変化などにより,気候の変化に関する研究は多数の研究者によって報告されており,草薙(2015)によってクラスター分析といった新たな分類方法なども行われ始めている.しかし,対象地域の中気候区分の変化や地域別での気候がどのように移り変わっていくかという点に関しては本格的な研究は進んでおらず,各地域においてそれぞれの要素の年変化型,平均値等を把握するという点においては,関口武の気候区分で用いられる気候地域の分類の過程で,簡易的にそれらを評価することができると考えられる.今回は中部地方を対象に,地点ごとの気候を総合的に評価していくために分析を行った.  分析には1989年~2018年の最新のデータを用いて,関口武の気候区分とケッペンの気候区分を算出し,それらを用いて地域別の気候についての考察と,時間別の気候についての考察は30年データを3分割し10年平均をそれぞれ求めて行う.地域別の考察は,30年平均による関口武の気候区分で行った.分析に用いるデータは,中部地方(三重県を含む)のアメダス四要素地点,気象観測所の最新30年分のデータを月別に,平均気温(℃),日最高気温の平均(℃),日最低気温の平均(℃),降水 量の合計(㎜),日降水量1mm 以上日数(日),合計日照時間(時間)の6種類の項目についてダウンロードを行った.  結果として,日較差,降水日数,日照率の年変化型では2種類に分類されたが,水分過剰量では,中央高地,太平洋側で複数に分類されたことにより7種類に分類された.それらの各要素の年変化型の分類により,151地点の気象観測所を63種類の気候パターンに分類することができ,中気候という細分度で様々な特徴が現れるということが分かった.10年平均の推移については,2009‐2018年で冬季では気温が低く,夏季では気温が高くなっていると推察され,10年毎の1月と8月の月平均気温の推移から,実際に年間の寒暖差が大きくなっているという事が分かった.また,10年毎の平均気温を表した図から,対象区域全体の相対的に気温が高い領域は増加しており,そのため全地点の平均気温を求めると10年ごとに上昇しており,特に1989-1998から1999-2008にかけては大きく上昇していることが分かった.