西内勇貴 光学式反射型固体降水観測器と積雪モデルを用いた積雪深推定に関する研究 熊倉俊郎  除雪は積雪地域における市民生活を支えるために重要な作業であり,除雪車の出動基準のひとつとして積雪深がある.しかし,既存の積雪深計ではコストや設置場所に課題がある.また,除雪の基準に用いる程度ならある程度の精度があればよい.そこで,近赤外線を用いることで固体降水の観測に優れている光学式反射型固体降水観測器(以下反射型と称する)を用いて積雪深を推定することを目的とする.この反射型からは固体降水粒子の粒径相当値と落下速度相当値を得ることができる.それらを用いて長岡市内で観測したデータを基に降水量を推定し,密度を一定と仮定して回帰した.この際,時間降雪深の真値には1時間毎に積雪をリセットできる回転式降雪深計を用いた.また,高温時で圧縮粘性が弱まることから,低温時のデータを使用した.次に,1時間の降雪を1つの層とした上載荷重による圧縮粘性を考慮した多層圧密沈降積雪モデルを,反射型データから求めた降雪深を入力データとして使用した.さらに,圧密沈降に加えて融雪量を気温に比例して求めるディグリーデイ法の拡張版であるディグリーアワー法を用いて積雪期間内の1時間あたりの融雪量を求めて推定積雪深とした.この推定積雪深をレーザ式積雪深計の積雪深の値を用いて検証した.その結果,積雪ピークの時間にはよく対応しているものの,積雪深は実際より大きい結果となった.RMSEは高気温時の事例で0.05 m,低気温時の事例で0.07 mであった.このとき,積雪深のピークは事例1で0.30 m,事例2で0.25 m程度であった.検証として,モデルによる積雪深を積雪重量に換算し,積雪重量計と比較を行った.その結果,高気温時では推定積雪重量が軽く,低気温時には重いことがわかった.そのため,仮定した密度の違いにより圧縮粘性係数が実際と異なり圧密沈降量に影響があったと考えられる.また,レーザ式積雪深計における低気温時の急な積雪深の低下に本モデルでは対応できていないという傾向が見られた.そのため,融雪過程において底面融雪や降雨流出など要因別に考慮することや,降雪深推定の際に気温による補正をおこなうことで精度の上昇が見込まれると考えられる.また,積雪深のピーク時間には対応できているため,ある程度の頻度で除雪が行われる道路の積雪状況の確認の用途であるならば十分であると考えられる.