佐藤涼奈 地震被害と地盤特性を考慮した複合的地震ハザード評価 池田隆明 日本では多くの地震が発生しており,地震被害軽減の対策が重要であると考えた.その手段としては,耐震設計やハザード評価などが考えられる.その中でも本研究ではハザード評価に注目した.ハザード評価については対象地域が都市部に集中しており,地域が限定されているなど問題点もある.地震ハザード評価は地震災害軽減のための有効な手段の1つであり,地震動に影響を及ぼす地盤や地形の詳細情報を付与して,評価精度の向上を目指す必要がある.本検討では2011年以降震度5弱の地震が6回発生し,地震危険度が高い地域に位置する長野県栄村を対象地域,2011年3月12日に発生したマグニチュード6.7の長野県北部の地震を検討地震として,微動計測を用いて詳細な地盤特性評価結果を反映させた地震ハザード評価を行った.栄村の中でも家屋被害が最も大きかった長野県栄村青倉集落をモデルケースに検討し,横倉集落に適用した. 地震ハザード評価を行うためには地震発生当時の状況を知る必要があると考え,地震発生当時の被害状況を把握することにした.対象地域の地震発生当時の地震被害分布図がなかったので,地震前後の住宅地図を用いて家屋被害を調査し,被害分布を推定した.各家屋を存在する・しない,形の変形がある・ないという点に注目して地震前後の住宅地図上で比較し,家屋被害の評価を行った.同じ被害の大きさに分類された家屋が多く集まるエリアごとに対象地域を区分けした.この区分けにより対象地域の地震被害分布を推定した.その後,地盤の観点から地震への影響を知るために,微動計測を行った.この微動計測によって得られるH/Vスペクトル比を用いて地盤特性を評価した.地盤特性の評価から対象地域をゆれやすいエリアとそれ以外というように区分けして検討,考察を行った.また,本研究では,過去に発生した地震を対象としているため,地震前後の住宅地図の比較から家屋被害を評価しエリア分けすることが可能であった.そのため,家屋被害の評価を地盤特性の評価に加えることで地震発生当時の建物リスクの評価を行うことができた.将来的な地震ハザード評価では家屋被害を把握することはできないので,地震発生当時の建物リスクの評価は行わず,微動計測によって得られるH/Vスペクトル比による地盤特性の評価のみを用いてハザード評価を行うことになる.