原 良太郎 路面から大気空間に供給される凍結防止剤の屋外実験とその輸送解析 下村 匠 構造物表面に到達する凍結防止剤による塩分量を予測することは,コンクリート構造物の塩害対策の一つとして重要である.本研究では,路面から大気中への凍結防止剤の供給とその構造物への到達過程を把握するために,自動車の走行によって路面から大気に供給される飛沫量とその粒径に関する屋外実験を行った.さらに,飛沫粒子の輸送・到達過程の数値シミュレーションを実施し,コンクリート構造物への到達過程について検討した. 研究内容として,次の1)〜3)を実施することで,以下のような結果を得ることができた. 1) 路面水分の塩分濃度の時系列変化の屋外実験および予測計算 路面水分の塩分濃度の時間的な変動を確認するために,屋内実験および予測計算を実施した.その結果,塩分濃度は凍結防止剤散布後120分経過後にほぼ平衡状態となること,気温が-1〜-10℃では気温に応じて3.0〜13.6%と変化し,気温が2〜4℃の場合は約3%程度なることが確認された.さらに,予測計算によって実験による塩分濃度の経時変化をおおむね再現できることが示された. 2) 路面から大気中に供給される飛沫量とその粒径の屋外実験とモデル化 自動車走行によって路面から大気に供給される飛沫量とその粒径について明かにするために屋外実験を行った.その結果,飛沫量は路面上の風速と自動車の走行速度の影響を受けていること,地表面から鉛直方向に減衰する指数分布でモデル化できることが示された.自動車の走行によって発生する飛沫粒子の粒径については,粒径別の体積率では粒径200μm以下の飛沫粒子が全体の8〜9割程度を占めていることが明らかになった. 3) 凍結防止剤を含んだ飛沫粒子の大気中での輸送過程と構造物への到達過程の把握 路面から発生した凍結防止剤によるコンクリート構造物への影響を評価するために,路面から大気中へ供給された飛沫粒子の大気中の輸送と構造物への到達過程の数値シミュレーションを実施した.屋外実験の結果から自動車の走行によって大気中に供給される飛沫量と粒径を計算条件として設定し,実際に凍結防止剤が散布されている実橋梁を対象に計算を行い,風下に位置するコンクリート構造物への影響を評価した.その結果,凍結防止剤を含んだ飛沫粒子は,周辺の地形形状と橋桁形状の影響を受けて構造物表面に到達していることが明らかになった.