滝 晴信 気象・波浪予測技術を応用したコンクリート構造物の塩害環境予測 下村 匠 個別のコンクリート構造物に作用する飛来塩分をその周辺の自然環境条件から精度良く予測することができれば,コンクリート構造物の塩害環境予測の高精度化に繋がる.本研究では,コンクリート構造物に作用する塩害環境を高精度で予測することを目的として,個別の構造物に応じた自然環境と地形条件の違いを定量評価する手法について検討を行った.さらに,定量評価した自然環境と地形条件を用いた飛来塩分の予測方法について検討を行った. 飛来塩分に影響を与える物理的な環境作用は,気象・波浪・地形条件の3つの項目に分けられるため,これらの項目を定量的に評価し,飛来塩分の予測に考慮できるようにした.個別のコンクリート構造物に応じた気象・波浪条件の定量評価の方法は,平面的な予測が可能な数値シミュレーションを用いる方法とした.気象条件の予測には,気象学・海岸工学分野で利用されている気象モデル(WRF),波浪予測には波浪推算モデル(SWAN)を用いた.これらのモデルを利用して平面かつ時系列の風速・波高を予測し,それを平均化することで定量評価した.地形条件の定量評価には,海岸・陸上の地形・障害物等を空中写真から判別する方法を採用した.対象とした地形・障害物は,汀線距離,海岸線の向き,消波施設の設置状況,海岸状況(砂浜等),陸上構造物である.自然環境および地形条件を考慮した飛来塩分量の予測は,これまでに定量評価してきた条件をパラメータとして入力することができる飛来塩分の予測式を定式化した. その結果,気象・波浪条件の予測結果は,一般に公開されている気象庁アメダスおよび国土交通省港港湾局(NOWPHAS)の現地観測結果を時系列で再現できており,沿岸線1km間隔に作用する風速および波高を定量評価すること可能であることを示すことができた.定量評価した自然環境と地形条件を考慮した飛来塩分の算定式の結果は,個別の構造物に作用する飛来塩分量を予測できており,コンクリート標準示方書に記載されている方法より高精度の予測結果であった. 本研究の結果より,気象モデルおよび波浪推算モデルを用いることで,個別の構造物に作用する自然環境条件(風・波浪)を定量評価できることが示されたとともに,定量評価した自然環境・地形条件をパラメータとして算定式に考慮することで,個別の構造物に作用する飛来塩分の予測精度が向上することが明らかになった.