Medina CONTRERAS DANIEL 圧縮力を受ける鋼構造物連結部の炭素繊維シートによる補修 宮下剛 近年土木構造物の老朽化が問題となっている.その中で,橋梁点検により添接板部の腐食損傷が多数発見されている.この部材に対して部材取替えや当て板等により補修が行われているが,腐食損傷の大小に関係なく作業が大規模になる点,母材に孔を空けるため応力の集中が発生する点など問題点がある.このような中で,鋼構造物の腐食損傷に対する補修・補強材料として,軽量,高強度,高弾性,高耐食性などの優れた特徴を有する炭素繊維シート接着工法が注目されている.本工法は,供用中の制約条件の下で効率的な補修・補強が可能であり,当て板等の従来の補修・補強の代替案として非常に有効である. 添接板の補修・補強方法は,NEXCOの炭素繊維シート補修・補強マニュアルに規定されているが,あまり適用されず,以下に上げる点の課題があると考える. ・テーパーの勾配が10:1以上と規定されているため,テーパーが長く施工範囲が広くなる. ・添接板近傍に腐食がある場合適用できない. ・添接板を不陸修正材で埋設した実験データが無い. ・添接板を圧縮力を受けているケーズの実験データが無い. そのため,以上に挙げた点に対して検証することで,添接板の補修・補強工法の適用範囲を拡大することを本研究の目的とした. 引張力と圧縮力をが作用する継手を対象にCFRPによる補修・補強方法の基礎研究を行った.具体的にテーパー長を短くした(5:1と2:1)場合の影響を確認した.また,不陸修正材と鋼材の間に剥離が発生しないため,接手部のあるケースのポリウレアパテ材の挿入位置を変更した.そして,添接板近傍の腐食を模擬し,欠損部の剛性を健全部同等以上まで回復できるか確認する. 本研究により,以下のことが明らかになった. 1)引張試験でテーパー長を5:1にすることで, SM570に近い応力レベルまで補修効果がある. 2)引張試験でテーパーを2:1にする場合はSM490の降伏点まで補修効果があるが,無補修のケースと比較すると最大応力が低下している. 3)圧縮試験でテーパー長を短くすることで,最大荷重が低下するが,すべてのケースは補修効果がある. 4)圧縮試験の接手部があるケースでポリウレアパテ材の位置が変更したことで剥離が発生しなかったが,最大荷重に影響がなかった.