三浦 和馬 先端翼付き鋼管杭の力学特性 宮下 剛 回転貫入型の鋼管杭は小径から大径まで広い範囲にわたって開発され、建築物または土木構造物の基礎として実用化されている.回転貫入型の鋼管杭(以下鋼管杭)が急速に普及した用いられる理由として,以下のような環境面と支持力面での有利さが挙げられる. ・鋼管の先端面または杭周面に溶接された螺旋翼や平板が回転推進力となって施工されるため,低振動・低騒音で掘削残土が発生しなく,撤去が容易であること ・羽根部が鉛直支持力を負担することで大きな支持力が期待できること. このような特性を持つ鋼管杭の形状として一般的なのが、鋼管先端部に鋼板をらせん状に取り付けるか、2 枚の鋼板を鋼管先端物に取り付けたものである。しかしこれらのタイプの鋼管杭では、先端地盤が礫質土や固結粘土層等の場合、先端翼をこれらの地層内に埋設することが困難となることが一般的であった。そこで、先端翼を三分割し、先端翼が硬質地盤に接する個所を増加させ、回転貫入時の抵抗を分散させるととともに、先端翼部に超硬チップを取り付けることで、削孔能力の改善を図ることとした。しかし新たなタイプの鋼管杭は先端翼が一般的なものと異なり、溶接部が増えたことにより新に耐荷力の評価が必要となってくる。そこで本研究では先端翼やその周辺部の適切な設計を行うための基本的な力学特性、性能評価を行うことを目的とする実験および解析を行った。 先端翼部の実強度を確認するため、台座を用いた圧縮試験を行い先端翼や溶接部といった部材ごとの応力分布などのデータを収集した。その後N値60相当の模擬地盤を作製し,実際の地盤を想定した圧縮試験を行い,台座実験で得られたデータとの比較を行った。2種類の実験をから以下のことが明らかになった。 ・溶接部が増えたことによる先端翼周辺の耐久性が懸念されたが、想定した荷重レベルまで降伏はしなかった。 ・最初に降伏する箇所は先端翼の溶接部付近であること。 ・弾性床上の梁理論を用いて先端翼の反力分布推定を行った結果,実験値よりも大きな値になる.そこで実験値と計算値から補正値を算出,値を補正すると,概ね実験 値と同じ値になった.またそこから溶接部の評価を行い,降伏ひずみに達していないことを確認できた. ・先端翼を設計する際の反力分布は、三角分布や等分布で再現できると考えられる。 ・N値60相当の土槽試験の結果を台座試験と比較した際、同じ荷重レベルで見たとき翼や溶接部応力が50%以上低下することがわかった。 破壊荷重等の把握に向けたFEM解析は,実験の再現解析を含め,今後の課題である.