松浦知希 繰返し変形作用時の砂の残留強度について 豊田浩史 残留強度は排水せん断あるいは定圧せん断においてせん断応力がピーク値を越え,漸次低下して究極的な定常せん断状態に達したときの値と定義される.残留強度は,すべり面にはたらく最小のせん断強度であることから,主に地すべりの安定解析や橋台の設計などに用いられる指標となっている.既往の研究より,地震時に地盤はすべり面が生じることで破壊が起こることが確認されており,そのときの地盤は水平に行ったり来たり繰返しせん断されることで一方向に変形が進んでいることがわかっている.しかし,現在設計で用いられている残留強度は単調載荷によるものであり,繰返し変形時の残留強度は明らかになっていない.そこで本研究では,乾燥砂を用いたリングせん断試験によって地震時の地盤の挙動を再現し,繰返し変形時の残留強度が単調変形時と比較してどの程度異なるのかを確認することを目的とした.  内部摩擦角を求めるため,垂直応力を変化させた.また,残留強度の与える相対密度Drの影響についても検討した.以下に本研究より得られた知見を示す. 1)単調,繰返し変形において,相対密度Drの増加に伴ってピーク強度は増加するのに対して,残留強度はほぼ一定になることが確認できた. 2)ピーク強度に関しては,相対密度Dr40,60%時に繰返し変形の方が単調変形よりも大きく,Dr80%時にはどちらの変形でもほぼ同じ値となった.残留強度に関しては,すべての密度で繰返し変形の方が大きくなった. 3)単調,繰返し変形時の残留状態における内部摩擦角?について比較を行ったところ,繰返し変形の方が数値で4.21deg,割合で約12%程度大きいことがわかった.  以上の知見より,最終的な残留強度は繰返し変形の方が大きくなるため,地震による破壊を考えるとき,砂の残留強度は,内部摩擦角?で,約12%程度割り増しで考える必要があるといえる.