勝部　達也

急勾配・急曲線部における実測データによるシールド挙動シミュレーション

杉本　光隆

都市の過密化に伴い，都市機能の拡充や環境整備に対する要求などから，地上空間を補う空間資源として地下空間が着目されており，地下開発が望まれるようになった．そこで，シールド工法は開削工法に比べ周辺の生活圏に対する影響が少ないなどの特徴から，都市に適したトンネル工法として急速に発展してきた．
現在，シールド機の制御・操作は自動掘進システムにより行われている．しかし，シールド掘削に関連する地盤物性値やシールド機に作用する外力および施工時荷重については未解明な点が多く，これらのシステムはいくつかの経験的な関係を基にし，理論的な背景を持たないのが現状である．これらの問題点を解決するためには，シールド機の作用力が力学的釣合い条件を満たすよう，シールド機の挙動・掘進条件を考慮できる，シールド機動力学モデルの確立が必要である．
さらに近年，都市の地下構造物はますます輻輳し，それに伴ってシールドトンネルのさらなる大深度化，急曲線化が進み，加えてコスト縮減の流れを受け，シールド機の急速施工化，セグメントの薄肉化および幅広化などが進んでいる．
本研究ではこれらの課題のうち，泥土圧式シールドによる実測データを用いて，シールド機動力学モデルを用いた挙動シミュレーションを実施し，その妥当性を検討することを目的とする．
本研究で対象としたシールドトンネルは，市街化された地域に新設されたため，既設構造物による制約により，最小曲線半径50mの急曲線かつ急勾配で構築された．本研究では，シールド機動力学モデルによる挙動シミュレーションを行ない，シミュレーションによって得られたデータと現場実測データを比較することにより，シールド機動力学モデルの妥当性を検証した．
その結果，シールド機動力学モデルによる挙動シミュレーション結果は，実際のシールド機掘進挙動によく一致し，モデルの妥当性が検証された．