茶木勇太 テールグリス止水性能に関する実験的検討 杉本光隆 シールドトンネルは,シールドと呼ばれる機械の前部にあるカッターヘッドで地山を掘削しながら,シールド内部でセグメントというプレキャスト材を組み立てて構築する.一般に,シールドは,フード部,ガーダー部,テール部から構成される.この内,テール部にはセグメントとのテールクリアランスがある.シールド内に土砂等が流入するのを防ぐためのテールシールが設置される.テールシールには,一般にテールブラシと呼ばれる細鋼線を束ねたブラシ式(ワイヤブラシ)が最もよく使用されている.テールシールは,通常複数段装備される.その場合,ブラシ内およびブラシ間に止水のための充填材としてテールシールグリス(以下グリスと呼ぶ)を所定の圧力で注入する.  本研究で用いるグリスは,海外実績はあるが国内実績のないBASF社製である.これらのグリスはグリスのみを用いる耐水圧試験を満たしている.実施工では,ワイヤブラシの影響等が懸念される.また,都市部では,中央リニア等で大深度地下利用が認可され,今後もプロジェクトが増加すると考えられる.そこで,シールドテール部を再現した要素実験装置で,大深度地下を想定した条件で止水が可能かどうかを検討した.さらに,これらのグリスは高価であることから,施工コストに大きな影響を与える漏出特性を把握した.  実験種類を2種類設定した.止水特性実験は,水圧1.2MPaを維持できる時間を計測した(最大1時間).漏出特性実験は,グリス圧1.0MPaに制御し,水圧を1.0MPaから10分ごとに0.1MPaずつ下げ,ワイヤブラシ間グリスのグリスボックス水側への漏出が増加し,グリスボックス水側がグリスで満たされ,水圧が制御できなくなった場合に終了した.このときの,グリス注入量をもとにグリスの漏出特性を把握した.実験因子は,グリスと内空高である.グリスはBASF社製の3種類(TSG6,7,8)とA社の2種類(グリスA,B)の5種類を用いた.内空高は50,70mmとした. 得られた結果を以下に列記する. @ シールドトンネルテールシールを再現した実験方法を確立した. A 今回使用したグリスは,内空高の違いによらず,1.2MPaの耐水性能がある. B グリスのちょう度が小さく,付着性が高いほど,グリスは漏出しにくくなる. C 内空高が小さいほうが,グリスが漏出しにくい.