篠原　雅幸



粘性土の変形特性に与えるせん断ひずみ速度の影響



豊田　浩史



アイソタック則とは，応力−ひずみ関係が，ひずみ速度によって変化することである．例えば，粘性土の二次圧密特性にはアイソタック則が適用出来ることが多い．近年，このような粘性土の沈下をアイソタッ ク則によって解釈する試みが広く注目されている．粘性の影響を受けて，ひずみ速度が大きいほど大きな抵抗が発生すると考えられるが，粘性土のせん断変形時において，どの程度アイソタック則が適用できるかは，いまだ不明確である．
そこで，本研究では，中空ねじりせん断試験装置を用いて，せん断中の中間主応力および平均主応力が一定の条件のもとで，せん断速度を変化させたせん断試験を行った．その結果をもとに，応力−ひずみ関係や最大偏差応力に与えるせん断速度の影響について評価を行った．
試験に用いた中空ねじり試験装置は中空円筒供試体にトルクを加えてねじることにより，円周方向にせん断力を作用させることを主目的とした直接型せん断試験の一種である．この試験機の使用により，複雑な三次元応力条件下での土の基本的な挙動を明らかにすることができる．
米山粘性土を試料とし，この試験機を用いて非排水せん断試験を行った．試験条件としてねじり速度を0.001deg/minから10deg/minまで変化させ，所定のせん断ひずみに達するまでせん断試験を実施した．さらに追加の条件として供試体の過圧密比も変化させ，試験結果を比較することにより，せん断中のアイソタック則のメカニズムの解明を試みた．
実験結果より，せん断ひずみ速度を変えた影響は，せん断ひずみが小さい部分に強く見られ，さらに過圧密比が大きくなると，大きいひずみまでアイソタック則を適用できる傾向が見られた．
今後の課題としてせん断中にせん断速度を変えていくステップ載荷のケースや不飽和粘性土を対象とした試験を行い，せん断ひずみ速度の影響を調べる予定である．