髙橋 明彦 落差工を対象としたレイン式の評価に関する実験的研究 細山田 得三  河床を安定させ,河川の縦断・横断形状を維持することを目的として設置される河川横断構造物の一つに落差工が存在する。 落差工は落差によって流水を落下させ,跳水を発生させて流水の減勢を図る設計である。しかし,落差工周辺では流水のエネルギーが一箇所に集中するため,落差工自体が破損変形する事例も少なくない。特に上下流の水位差によって発生する浸透流などの河床地盤に作用する水理現象については,各河川の河道特性や落差工の構造条件によって大きく変化するとともに,浸透流などを防止するための構造物である遮水工の設計に使用されるレイン式は,経験式であり,検証が不十分とされている。そのため,本研究ではレイン式について着目し研究を行った。 実験方法としては,水叩きを有する落差工を設置し,河床材料には東北珪砂5号と,砂利を使用した。水叩き部上面の高さを300mmに設定し,護床ブロック区間も水平となるように七列設置した。本実験では,浸透流の観測を行うため,地盤高160mm,200mm,240mmと40mm間隔で護床ブロック二列目の河床地盤内に間隙水圧計を設置した。また,レイン式の浸透路長を一つに設定するため,遮水工の根入れ長総計を150mmと設定し,レイン式の計算を行ったところ設計条件を満たしているためこの条件にて,遮水工設置ケース別に実験水路にて10分間観測を行った。ケース1は落差工上流部に根入れ長150㎜の遮水工を1本,ケース2は落差工下流部に150㎜の落差工を1本,ケース3は落差工上流部に100㎜,下流部に50㎜の落差工を計2本設置したものである。また,遮水工を設置しない条件についても実験を行った。 全ケースとも間隙水圧の値が上昇したのち,観測時間二分程度で間隙水圧の値が安定し平衡を保った。各ケース別に3つ設置した間隙水圧計の値の平均値を比較した結果,遮水工の設置がない条件が安定後の間隙水圧の値が遮水工を設置している条件よりも大きい結果となった。これは,レインの式にて算出した遮水工によって浸透流の影響を抑えられていることが言えるため,レイン式の根入れ長の計算は正当性が高いと判断される。 また,遮水工を設置している条件を比較すると,遮水工を上流と下流に分けて設置したケース3は,他のケースと比べ,間隙水圧の値が200㎩程度低い結果となったことから,浸透路長が同等でも,遮水工の設置位置本数によって浸透流の影響は変化するのではないかと考えられる。つまり,レイン式に遮水工設置条件を加えるなどの改善余地があるのではないかと考えられる。