池内 正俊 水塊落下位置による防波堤施設への影響に関する研究 細山田得三 近年の研究で,東日本大震災で発生した津波被害は,防波堤の転倒によってその被害が大きくなったことが報告されている.防波堤の転倒の原因は越流する水塊によって岸側の地盤が洗掘され,支持力が低下することである.その対策として,防波堤背面の地盤に腹付け盛土を追加し,ブロックによって被覆する工法がとられた.これにより粘り強く耐える構造となり,防波堤設計ガイドラインや基準書にも明記された.しかしながら,最近の研究で津波による越流だけでなく,高波の越波でもブロックが被災する事例が報告された.津波よりも明らかに発生頻度の高い「高波」によりブロックが被災すると,津波襲来時に本来有すべき防波堤の機能を発揮できない可能性がある.また,水塊の落水位置によって防波堤の被災に影響を及ぼす可能性があると示された. 本研究では,ケーソン構造物の後端部を延長することによって水塊の落水位置を遠方に変化させ,被害の軽減ができるかを検証する二次元の水理模型実験を行った.模型断面はK港防波堤の1/110縮尺とし,延長なしの基準断面と延長+100mm,+150mmm,+200mmの延長を行った3断面,延長構造物の通水面に孔を設けた3断面の計7断面とした.実験条件は3水位・5流量の連続実験であり,流速及び波高の時系列を取得し,ビデオカメラで流れの作用状況を撮影した.実験の結果,いくつかの実験ケースでブロックの飛散が確認された.また,後端部を岸側に延長するにつれ飛散するブロックの位置が岸側に変化することを確認した.定量的な評価としては,水位をケーソン高さで無次元化した水位占有度と水塊のブロック到達距離とマウンド天端幅の無次元化量で飛散する条件の指標として有効であると明らかになった.また,孔を設けることにより水塊が孔から落下して分離し,衝撃を和らげるためにブロック被害を低減できることも明らかになった. 実験条件に対応した高精度粒子法を用いた再現計算も実施し,落水する水塊の流れの把握を行った.結果として,延長を行うことで水塊による高速度流の位置が変化していること,大渦の発生により斜面部に巻き上げ流速が発生していることが再現計算でも明らかになった.最終的に,後端部延長構造物を設けることにより,津波越流によるブロック被害の位置を調節できることを確認した.また,延長構造物に孔を設けることによりブロック被害軽減にもつながることを計算でも確認した.